孵石暴走事件、そして先日の研究所襲撃事件と不審な事件が相次いでいる。折りしも、今のトレミア・アカデミーには、異端の夜色名詠者と名詠式に異常な才覚を現したものがいる。これは果たして偶然なのか?それらに纏わる不審現象を調べるために、カインツも所属している世界で十一人しかいない<イ短調>のメンバーが立ち上がったが、不審者は既にトレミア・アカデミーへ手を伸ばしていて……
いやあ、面白かった。今までも、たまに突拍子もないことをしてくれていたクルーエルが、名詠式でかなり高度なことを無意識なうちにやっているというところは驚きでしたが、意外な才覚を見せ始めたクルーエルと、同じ場所に異端の夜色名詠のネイトがいて、そこへさらに灰色名詠が絡んでくるんですから、面白くないわけがない。
しかも、<イ短調>なる人たちが出てきてくれたおかげで、今まで謎であったことが明かされてきたり、さらに謎めいたことがでてきたりと、大きく物語が動いてきましたね。
ちなみに、今回<イ短調>から派遣されてきたサリナルヴァは、かなりお気に入り。研究のためなら寝食惜しまない熱意と、傲慢に見せかけておきながら、時折見せる優しさにやられます。こういう姉御肌(っていうのかしら)な女性にやられてしまう僕がいる。
それはともかく、敵対する灰色名詠の思惑が見えないまま、アカデミー内に進入を許したことで、一気にサスペンスフルな展開になってくれて、もうドキドキでしたよ。最も力の弱いものが、最も危険なところに近寄ってしまうというのはお約束ですが、灰色名詠という圧倒的攻撃力を持つ相手を目の前にして、体も心も震わせながら、それでも友を、仲間を信じるミオの姿が良かったです。やばい、ミオが好きになってきたぞ(別にやばくない)。
今回最も意表を突かれたのは、クルーエルを襲った出来事ですね。強さと言う意味では、かなりのものを名詠できるだけに、まさか足を引っ張る(というと言葉悪いけど)とは思わなかったです。
そんなクルーエルの姿を見て、動揺しながらも、彼女の言葉を聴いて、自分の心に湧き上がる思いを糧に、ネイトが一歩前へ出ようと決意するところが良かったです。二人の関係が、守りたい大切な人から、信頼の置ける大切な人へと、変わっていくところが素敵でした。むろん、二人の間を取り持ったミオの活躍も忘れちゃいけないですよね。
ひとまず危険は回避されましたが、灰色名詠だけでなく、更なる展開も待ち受けているみたいだなあ。いろいろ見えてきたものもありますが、まだまだ明かされていないことも多いので、これからどうなっていくのか、ものすごく楽しみです。
それにしても、クルーエルとネイトの最後はすごかった。今回の件を経て、信頼という絆が深まったことによる甘えなんだろうなと思うと、ニヤニヤさせられますが、純粋な男の子に何てことを言うんですか!ああ、もう、きゅんきゅんしまくりです。やっぱ、このふたりの関係、大好き。
アマデウスの詩、謳え敗者の王 (富士見ファンタジア文庫 174-3 黄昏色の詠使い 3)
細音 啓
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