またあの夢だ。逃げろといわれて逃げたあの時、本当に自分は何もできなかったのだろうか。先日の事件に、エイダが苛まされていたころ、一年生たちの基礎作りとして行われる、夏季集中補講が行われることになった。だが、そこには、あの「孵石」を精製した研究支部があり、しかも、その支部からの音信が不通になっているという。教師であるゼッセルとエンネは、研究所の様子を探ることにしたが……
生まれつき才能から、詠生物を送り還す祓名民(ジルシエ)の名を得たのに、決められた道を歩むのに反発し、名詠士を目指したエイダが、夏季集中補講へ向かった先で「孵石」による事件が発生して、というお話です。
いやあ、いいです。個人的には前作より好きだなあ。定められた道を進む事に反発して、名詠士という新たな道を選択したのに、それでいいのかというエイダの葛藤が伝わってきましたね。自分の進むべき道について迷いを生むのは当然だと思うんですが、それだけ迷いながらも、決して祓名民であることを止めようとしなかったところに、いろいろ思わされるものがありましたね。
自分ひとりで悩んでいたエイダでしたが、そんな彼女を見守る友人のサージェスが素敵でした。自ら気づいて欲しいと優しく突き放すエイダの父親も良かったんですが、それ以上にサージェスの心は、エイダにとって大きな支えになったと思います。親友と呼べる人がいるとしたら、間違いなくエイダにとっては、サージェスがそうですよね。
メインの話こそエイダでしたが、クルーエルとネイトも、素敵でしたね。分校へ行くために、列車に乗ったときのシーンもよかったですが、なんと言っても、自分の力を恐れたクルーエルに対して、ネイトが伝えた言葉が良かったですよね。あれほど真っ直ぐな言葉と信頼を受けたら、どれほど心強いだろう。きっと、ありとあらゆる温かさみたいなものが、心に沁みたんじゃないかなあ。
急がなくていいから、いつか二人の関係が、クラスメイトから変わっていくといいなと思いましたね。
今回の話では、良いところしか思い浮かばないんですが、その中でも一番良かったのは、エイダが決意を固めて戦うシーンでしょう。
詠え。思い出せ。
そこから始まる詠と過去を振り返る言葉は、あまりにもまっすぐで、あまりにも興奮させられて、気がつけば、涙が流れていました。ほんと素晴らしかったです。
前作に比べるとストーリィがシンプルでしたが、その分、はっきりと伝わってくるものがあったと思います。今回のお話で「孵石」精製についていろいろ裏が見えてきましたが、それでもまだ隠されているものがあるし、あの最後が最後ですから、気になることばかりですね。次なる三巻は、「夜色の少年」の織りなす、新しい詠と約束の物語になるとのことなので、大いに楽しみです。
大絶賛オススメ!
奏でる少女の道行きは (富士見ファンタジア文庫 174-2 黄昏色の詠使い 2)
細音 啓
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