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[吉村夜] サイレント・ラヴァーズ ― 悪魔になった少年

核による大崩壊から二百年。氷と雪に覆われた世界で、かろうじて命脈を保っていた人類は、争いの渦中にあった。ある日、連合軍のクロスナイフ小隊は、カイオン軍と遭遇し、気を取られていたヒバナは、敵の人型陸戦兵器に囲まれてしまった。
ここで死ぬのかとヒバナが思ったとき、悪魔のようなフォルムをしたウォーリアーが現れて……

食料プラントを求め、連合軍とカイオン軍が、人型陸戦兵器で争うという戦争ものですが、死が間近にあるからこその恋みたいな、悲哀が漂うお話でもありました。

除隊まであと一年半というヒバナが、故郷で待つ婚約者のセツナとのやり取りを思い出すところは、青く甘いものを感じますが、それだけに目の前に敵が現れたら、引き金を引き続けるしかないという現実が残酷に感じました。
戦いたくない、死にたくないという思いは、どちらの陣営も同じなのに。待つ人がいる、夢がある、そんな少年少女が、駆り出されるというのは、読んでいて辛いです。

そんなヒバナが所属するクロスナイフ小隊の話が中心となりますが、どうにも甘いところを感じる隊員たちがいるだけに(特に男共)、まとめあげるのは大変そうだなあと思いましたが、隊長がいい感じに頑固オヤジっぽくて(というと語弊がありそうだけど)カッコよかったです。好きだなあ、こういう人。
他の隊員たちも、もうちょっと何か自分みたいなものを持っていてほしかったけど、それほど特徴がありませんでしたね。これは後々成長していく姿を書いてくれるのかしら。

それにしても、前線に立つ者のことなど考えずに、戦線を広げることが考える人がいるというのは、良くある話ですが、そのために行われた投資はおぞましいものでした。敵を破り(Vanquish)、その地を護衛する者(Guard)である人型陸戦兵器の VG なのに、TYPE-D の残酷さといったら……。いや、残酷なのは、その後の出会いかもしれません。 「悪魔になった少年」ではなく「悪魔にさせられた少年」の悲しみは、痛いなんてものじゃないですね。気づかないことは幸せなのか、気づいてることは不幸なのかわかりませんが、この流れでハッピーエンドを迎えるには、ウルトラC的なものが必要になりそう。いったい、どうなるんだろう。

いわゆる人間関係やら、そういった話はとても良かったんですが、戦闘シーンでの敵との駆け引きみたいなものがちょっと微妙で、あれで罠とか冷酷とか言われてもと思わなくもない。ロボットものなのに、戦闘もの以外のところのほうが楽しいってのは、もったいない気がするので、何とかしてほしいかな。

とりあえず、今回は全体的なお話とか序章的な雰囲気でしたね。でも、裏のほうでいろいろ動いてることもあるので、このあたりは気になるところ……ではあるんですが、僕の好みから外れるせいか、ちょっと微妙だったりする。続きはどうしようかなあ。

サイレント・ラヴァーズ―悪魔になった少年 - 吉村 夜

サイレント・ラヴァーズ―悪魔になった少年
吉村 夜

富士見書房(文庫)
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