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[細音啓] イヴは夜明けに微笑んで 黄昏色の詠使い

色を媒体に、呼び出したい物、出会いたい物を心に描き、詠うことで自分の下へと招きよせる技術「名詠式」を学ぶ学校で、クルーエルは、赤、青、黄、緑、白以外の理論として構築されていない夜色名詠を使うネイトと出会った。自分より幼い子ということもあって、興味を持ちつつ面倒を見ていたら、五色すべての色を使える色名詠士・カインツもまた夜色名詠士を探していて……。

母から夜色名詠を受け継いだネイトと、目標が見つからないクルーエルが、名詠式を通じて成長していくお話。これは素敵なボーイミーツガールものですね。透明感あふれる雰囲気に心を掴まれました。
メインストーリーの十年前にあたるプロローグが、また良くて。夢を追おうとするイブマリーとカインツの「約束」はほんとに素敵でした。これだけで、ハマりましたね。

夜色名詠を完成させるために、日々努力するネイトの真っ直ぐな姿には、心惹かれるものがありますが、そんなネイトのひたむきな姿や、将来の目標に向けて動いている友人のミオの姿を見て、不安を抱えるクルーエルの気持ちがよくわかります。
それなりに何でも出来るけれど、何をしていいのかわからない。そんな将来への不安って、誰もが抱えるものじゃないかと思います。それだけに、ネイトの言葉は、ストンと心に入ったんだろうなあ。
ネイト、クルーエル、ミオ、ネイトのペットが作り上げる雰囲気は、読んでいて微笑ましい気持ちになりますね。

名声を手に入れてからも、かつての約束を忘れることができなかったのは、本当に手に入れたかったものだからなんでしょうね。コートのエピソードとか泣きそうになります。約束があったからこそ、目標を達成できたとはいえ、あの時点で言葉にしていたら、ひょっとしたら未来も変わっていたかもしれないだけに、カインツの気持ちを考えると切ないです。

名詠されたヒドラとの戦いでは、多少都合のいいところがあるんですが、ネイト、クルーエル、それぞれが思いやりながら成長していくところがとても良く、それ以上にカインツと <始まりの女>に対して、良かったねと言いたくなる気持ちでいっぱいになりました。

ああ、これはほんといいです。最後まできれいにまとめられて、いろいろな想いを感じられる雰囲気に酔いしれました。プロローグでいいなと思えたら、間違いなく楽しめると思います。
いくつか不明なところがあるだけに、ぜひとも続編をお願いしたいですね。
第18回ファンタジア長編小説大賞佳作受賞作。

イヴは夜明けに微笑んで (富士見ファンタジア文庫 174-1 黄昏色の詠使い) - 細音 啓

イヴは夜明けに微笑んで (富士見ファンタジア文庫 174-1 黄昏色の詠使い)
細音 啓

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