「わ〜ったわ〜った!お前はいい兄貴だよ。……けどな。こんな紙を渡されて、アタックしてもいいですよって、お前ねえ……。根本的なことを忘れてるよ」
俺は軽く息を吸い込んでから、真顔で答えた。
「俺はまだ……恋に落ちていない」
「ブーーーーーーーーーーーーーッ!!」
何かとふざけては、迷惑をかけてくる口八丁なクラスメイト・田所から渡されたのは、彼の妹へのアタック権だった。活発なロングヘアの恵衣美と、占い好きなショートカットの詠羅。親友とは似ても似つかぬ可愛い妹たちだが、お互い仲が悪く、一緒にいると喧嘩ばかりする始末。アタック権など冗談だと思いながらも、ひょんなことから彼女たちそれぞれとちょっとしたデートをすることになった赤井公だが……第3回GA文庫大賞期待賞受賞作。
これは面白かった!決して格好いいわけじゃない主人公なんだけど、いつだって真摯というかまっすぐと言うか、不器用ながらも、彼なりに周囲の人のことを思って行動する姿が、なんかいいんだなあ。時折、女の子たちを真っ赤にさせちゃうような恥ずかしい言葉を口にして、それが無自覚なのは始末が悪いですけどね!
いわゆるヒロイン的な役割を果たす姉妹は、それぞれ性格が異なるんですが、側にいると、見た目とは違うところも見えてきたりして、どちらも気になる存在になる可愛さを見せてくれるから、困りますね。
姉妹の兄・田所に引っ掻き回された結果、それぞれとデート的なものを重ねることになり、それでも公の友人の妹という視線は、なかなか変わらなかったように思いますが、姉妹からは、公との距離がだんだんと兄の友人以上のものへとなっていき……という展開が、なんともニヤリとさせられちゃうんだなあ。
でもまあ、姉妹たちが惹かれるのはわかりますよね。困ってるひとがいたら、道化になってでもお節介をして、格好良くないのに格好いい、奇妙な頼もしさみたいなのが、公にはありました。
ただ、終盤の展開はちょっと……と思わなくもない。姉妹それぞれの好感度を上げていくところや、そのことを面白く思わないクラスメイトの女の子・空河さんの嫉妬模様とか、中盤までがとても良かっただけに、曰くありそうな田所家の事情とその結果は、ちょっと強引な気がしないでもない。
でもまあ、この雰囲気といい距離感といい、とても好みなので、続きが出たら間違いなく読むと思います。彼が恋に落ちるのはいつになるのか楽しみですね。
誕生日プレゼントとして贈ってくださったタカヒナさんに感謝。
俺はまだ恋に落ちていない (GA文庫)
高木 幸一
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