「……もう一度言いますが、この件は貴女にとって有益ではありません」
「わかってる」
「この件そのものも、解決するのは容易ではないでしょう」
「ああ、望むところだ」
「キマイラと ― ひいてはあのオルカの街と敵対することになるかもしれません」
「だからって、君たちを見捨てる理由にはならない」
人魚、巨大な土蜘蛛、ハーピー、ケンタウロスなどなど、幻想の島にしかいない幻想の生物・オルカ。彼らの間に入り、諍いを調停する職務を夢見て赴任してきた新人調停員・稲朽深弦が、失敗を繰り返しながらオルカの信頼を得ていくシリーズの第三弾。今回は、強制送還の危機を回避するために、実績作りにいそしむ深弦が、オルカ達が作ったという街を訪れて……というお話です。
相変わらず掛け合いが面白い。 ノリのいいオルカが側にいると、大変だろうけど楽しい毎日なんだろうなあ、なんて思ってしまう僕がいますが、それはともかく、今回はいつになく、不安がつきまとう展開でしたね。
深弦が師事する秋永調停員の不在を取り繕うかのように、実績作りに向かおうとする深弦の不安定さが見ていて痛々しくて……目的のためだけに動こうとする彼女の危うさが引っかかって、ノリは楽しくとも、もやもやしたものを感じながら読んでました。
そこを突いてくれたライバルの存在は、弱ってるときだからこそ痛いけれど、でも向き合えなくなるのはもっと辛いし……思わずケンカしてしまったのは、寂しさからくる甘えだと思うけど、苦しくとも、迷っても、決して下がろうとしなかった深弦が良かったです。
たとえ言葉で自分を偽っていたとしても、彼女は目の前に困った人やオルカがいたら、ぜったい助けてるよね。うん、うん。
今回の相談事を解決するための策は、あまりにも強引で、あまりにも大がかりだったけど、それをやってのけるパワーが、深弦とセシルにはあるんだよなあ。ベテランたちだとかえってこういう交渉はできないだろうから、新人ならではといったところでしょうか。
大騒ぎして、カタルシスを引き起こして、解決に導いた「戦争」模様が楽しかったです。
さてさて、今回は二人のベテラン調停員と出会いましたが、どうやら秋永調停員に繋がりがあるようなので、そろそろそっち方面の話が絡んでくるのかな?
オルカたちの話もいいけど、秋永調停員の謎も知りたいので、話が進むことを期待したいですね。
ちなみに今回の一番面白かったキャラは、土蜘蛛さんでしょう。あのアイドルっぷりには拍手喝采したくなりました。次も出番多いといいな-。
オルキヌス3 稲朽深弦の調停生活 (GA文庫 と 2-3)
鳥羽 徹
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