「とにかく、その方も控えに必要となった。鱗も必要ゆえ、やはりわらわとドラゴンを退治に参るのじゃ」
「ちょっとお子様。気安くドラゴン退治と言いますけど、うちの旦那様は魔法使いとはいっても、駆け出しでしかないんですよ。ドラゴンどころか、野良犬を追い払うのがやっとなんですから」
「えっ!?そこまで軽く見られてたの?いくらなんでも―」
「旦那様は黙っていてください!」
「はい」
高名な魔術師が創業した魔法材店。ところが三代目であるシャルトはとてもぐうたらなので、気づけば借金が嵩む一方。身寄りがない自分を住み込みで雇ってくれたことには感謝すれど、それはそれと丹那様の尻を叩く使用人のサラ。そんなふたりの前に、ドラゴン退治にやってきたという美少女が、高名な魔術師の孫であるシャルトを連れて行きたいと言い出して……というお話。
これは面白かった。
魔法材店のお話ってことで、てっきり三代目とサラが中心となるのかと思いきや、三代目はドラゴン探しに出かけてしまったので、ちょっと拍子抜けしましたけど、離れたことで自分の気持ちに気づいていくサラの乙女心が、とてつもなく可愛くてたまらない。
彼女の出番は各章の始めにちらっと出てくるぐらいなんですが、とても印象的ですね。
で、三代目は魔法材料となるドラゴンの鱗を、商家の娘というリア=メイはドラゴン退治を、ということで、共に旅することになったんですが、まあ、リア=メイの正体がどんなものかは、彼女を追いかけてくる人たちのおかげですぐわかるんだけど、やっかいな連中のいわゆる権力争いに巻き込まれそうになりながら、のらりくらりとやり過ごす姿が、妙に格好良く感じました。僕はこういう人が好きなのかもしれない。
一方のリア=メイは……危険を危険と感じないまま、突き進むところには、正直ムカつきました。信念はいいんですけどねぇ。
だからかどうかわかりませんが、彼女との旅路で描かれるお約束なシーンはそれほど萌えたりせず。でも、追いかけてくるものたちとのバカバカしいやり取りは楽しかったな。
むしろ、リア=メイは、男じゃなくて女を相手にしたときに魅力を見せるのかもしれない。戻ってきたときのサラとのやり取りでみせた誘導尋問の素晴らしさに、拍手したくなりました。
いやあ、面白かった。最後の方はちょっと蛇足かなと思えることも多かったけど、このあたりを題材にしたお話が出たりするのかな。既に続刊が出ているので、どんな感じなのか楽しみです。
第1回GA文庫大賞奨励賞受賞作。
魔法の材料ございます ドーク魔法材店三代目仕入れ苦労譚 (GA文庫)
葵 東
ソフトバンククリエイティブ(文庫)
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