「葵ちゃん、まさか……」
「メイド刑事、若槻葵はいなくなりました」
きっぱりと葵は言った。
「ここにいるのは、かりそめにメイドの修行をしていた、元レディースの総長です。そんな奴が、ただのタイマン勝負をしに行こう、というのを止めている暇があったら」
葵は眼鏡を外して、背中まである髪をひと振りした。
「あんたらは全力で、黒幕の善香と『あの方』の居場所をつきとめるんだね」
ここは冥土の一里塚……ってことで、メイド版スケバン刑事シリーズの第9弾。黒須三姉妹最凶の女・善香が、葵と海堂が追いつめていく、シリーズ最終巻です。
さすが最終巻ですね。これでもかって盛り上がり方です。葵を追いつめるために、まず周囲に危険をばらまくというやり方の悪どさったらない。これまでも傷つくことは多かったけど、こんなに死の臭いを感じさせたのは、初めてじゃないかしら。動揺する葵の姿が痛々しかったです。
それでも我慢に我慢を重ねていた葵でしたが、ルカを木津つけられたことでついにブチ切れて……、ここから繁劇なるかと思ったところに、さらなる追い打ちをかけるから善香は容赦ない。
政治的に、さらにはメイド刑事を色物として取り扱うことで、マスコミをも誘導して、葵と海堂は追いつめられていって、すべてが後手に回っていく様は、とても心苦しいものがありましたが、そんな中、かつて葵が助けた人たちが、動いてくれるシーンがよかった。これを人徳と言わずしてなんというか。
追いつめられたことで、葵と海堂の間にちょっとしたロマンス模様が見られたのは、こんな状況でありながら嬉しく思うものでしたが……ただなあ、あのラストバトルの展開はなあ。いろいろ拍子抜けるものがありました。
とはいえ、メイド刑事である葵とその主人・海堂が残したものは、多くの人の心の支えになるものであったというラストは良かったです。
メイド刑事 9 (GA文庫 は 1-9)
早見 裕司
ソフトバンククリエイティブ(文庫)
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