「強さには多くの種類があります。その中で調停員の強さが何かと問われれば、どれだけのオルカから信頼を得られるかに尽きるでしょう。ならば深弦殿、全てのオルカの信頼を背負いましょう。そして、それでもなお優しさを忘れずにいましょう」
オリーブは一息。
「妥協など無用です。諦観など不要です。仕方なくなど、ありません。貴女の理想は、貴女自身によって現実のものとできます」
人魚、巨大な土蜘蛛、ハーピー、ケンタウロスなどなど、幻想の島にしかいない幻想の生物・オルカ。彼らの間に入り、諍いを調停する職務を夢見て赴任してきた新人調停員・稲朽深弦が、失敗を繰り返しながらオルカの信頼を得ていくお話です。
これは楽しかった!
オルカを相手にしての会話のノリはとても漫才で、笑いをこらえるのが難しいほどでしたが、そういったコミカルさだけでなく、憧れの職を夢見るまっすぐさや、好奇心いっぱいで触れあうオルカたちとの出会いなど、ワクワクする気持ちが伝わってきて、読むのが楽しいんです。
憧れが強すぎて、幻獣に対して理想を求めてしまうこともあり、失敗することもあるんだけど、反省しながらも折れない強さを持つのが彼女の強さですよね。
島の先輩として、また師事する(予定だった)秋永壱里の補佐をしていたオルカのオリーブの見守る姿が温かくて良かったです。このコンビは素敵だなあ。
今回、調停するのに一番の難しかったのは、筋肉バカなケンタウロスをいさめることでしたが、どうするのかなと思った瞬間に、思い当たったんですよ。勝負話が持ち上がったときには。
でもね、まさかと。いくらなんでもそんなことは……と思っていたのに、本気でアレで勝負をしようと言い出したときの驚きをどう表現すればいいのか。
バカだバカだ、大バカだ!(ほめ言葉)。これを本気で持ってきた深弦に拍手したくなる。いやあ、おもしろかった。
まだまだ強引な調停が目立つけれども、心は伝わるから信頼を得ていくのもわかりますよね。いつか師に追いつき、追い越すことができるんでしょうか。
続きが楽しみでなりません。
第1回GA文庫大賞奨励賞受賞作。
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