Home > ライトノベル > [林亮介] 迷宮街クロニクル(2) 散る花の残すもの

[林亮介] 迷宮街クロニクル(2) 散る花の残すもの

奇妙に響くかもしれないが、連戦連勝とは強さを意味しない。もちろんほとんどの場合それを成し遂げるには秀でた能力が必要だったが、あるいは強運によって困難を事前に避けてきた、ということも考えられるからには強さを保証してはくれないのだ。本当の強さは負けてなお立ち上がるそのときに見られる。困難を受け止めること、被害を最小に抑えること、次からは未然に防ぐこと。それこそが強さなのだった。

怪物を倒すことで多大な利益を得られる大迷宮。ゴールドラッシュを夢見て、死亡率14%という地下探索に向かう人々を描くシリーズの第二弾。今回は迷宮街の十二月の様々なイベントが描かれるお話です。

ある意味、大きな動きというのはなかったんですが(派手さという意味で)、ひとりひとりに焦点を当てて、掘り下げられるので、多くの楽しみや悲しみを実感できますね。

それにしても、ここに登場する人たちは、決して聖人君子だけでないんだけど、心の弱さと直面する機会が多いゆえか、自問して自答して、成長していく姿が見えて、誰も彼も魅力を感じてしまいます。だからこそ、突如訪れる死がつらい。
地下でトラップに引っかかったとある隊を襲った悲劇には、心を抉られるような思いでした。あとちょっとだと言うのに……。

真壁たちの毎日は、楽しそうだなあと思ったりするけれど、逆に言うなれば、死が間近にあるからこそ、何に対してでも、向き合って取り組まないと後悔することがわかってるからなんだろうなあ。

ただ、このあたりの認識が当たり前になっていくことで、いつの間にか世間とのズレが生じていることが伝わってきて、ちょっと怖くなる。迷宮街にいるとわからないけど、外から見ると別の、これが磨耗じゃなければいいんだけど……やはり死と隣り合わせというプレッシャーは、尋常じゃないんだなと改めて思う次第。

さて、幸せを得て出ていくもの、無言の躯となって去って行くものなど、多くのことがあった年の瀬ですが、とりあえず、生き残った人たちは、新たなる年でも生き延びてほしいですね。格好悪くてもいいから。

最後に書き下ろしの短編「祭典の前夜祭」が収録されています。十二月のとある日に、落ち込んだ笠置町翠を励ますため、真壁が彼女を連れて動物園へ行くお話なんですが……男前だなあ、真壁。彼女一筋ってのはわかるけど、美人さんを前にして揺れない落ち着きようが、1巻のときと違いすぎて、微妙に違和感ないわけじゃない。
ただ、こういう姿を見てしまうと、翠の視野に入ってしまうんじゃないかしら。報われない恋のために別の恋を……と思ってたはずなのに。

まだいろんな人がいるからきっと出会いがあるよ!と言ってあげたいけど、彼女はつらい恋をする運命なのかしら、なんてことを思って、ひとり切なくなってる僕がいる。

迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫) - 林 亮介

迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの (GA文庫)
林 亮介

ソフトバンククリエイティブ(文庫)
Amazon | bk1


関連エントリー
[林亮介] [GA文庫] [ライトノベル]

Home > ライトノベル > [林亮介] 迷宮街クロニクル(2) 散る花の残すもの

Trackback:1

TrackBack URL for this entry
http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/3033
Listed below are links to weblogs that reference
[林亮介] 迷宮街クロニクル(2) 散る花の残すもの from booklines.net
[感想][★★★☆☆][林亮介]「迷宮街クロニクル2 散る花の残すもの」 from ただ、それじゃ終われないでしょ! 2009-04-29 (水) 02:11
「ああ、もちろんいいですよ。お守りすると口だけで言うのは」 「口だけ?」 「ええ。私たちは実際には何が起きても手を出しません。探索のメリットになる人なら...

Comment:0

Comment Form
Remember personal info

Home > ライトノベル > [林亮介] 迷宮街クロニクル(2) 散る花の残すもの

Search
お気に入り

異形の王子と毒を吐く少女の恋の物語

4048700588

他人を寄せつけぬ毒を載せた言葉を吐いていた少女が、王子と伝承と出会ったことで、信じる思いを紡ぐようになる、その祈るような思いに涙しました。懐かしき人たちとの再会もまた素敵。→感想


それは血の繋がらない家族の物語。

4048700480

大きな山や谷があるようなお話しではないんだけれど、クセのある七人のきょうだいが共に暮らすその家には、じんわり温かい家庭がありました。それぞれ抱えているものはあるけれど、この家族ならきっと支え合いながら乗り越えてくれると信じてる→感想


それは「夢利き」が語る人の夢の物語。

夢の上(1) 翠輝晶・蒼輝晶 多崎礼

最高傑作級!辛くとも好きな人と共に歩める幸せ、あるいは人の夢に乗る幸せと切なさ。独立しながら、リンクする物語は、温かさに、人を想う気持ちに満ちあふれて、胸が熱くなる。人が人と出会うことの素晴らしさは、時に眩しくもあり、切なくもなるんだなと思いました。→感想


江戸時代。新たな暦を作る偉業を成し遂げた渋川春海の物語。

天地明察

最高傑作!碁打ちであり、算術家でもある男が、打ちのめされ挫折して挫折して挫折して、でも夢を忘れられず、立ち向かう姿に、どれほど興奮させられたか、泣かされたことか!さりげなく描かれる恋も素晴らしく、読み終わりたくないとこれほど思った作品はありません。 → 感想


左遷された北嶺で隠居生活を堪能しようとした史官ヤエトの前に、皇女が太守としてやってくるお話。

翼の帰る処 上 (1) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-1)翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)

中間管理職的苦労に悩まされるヤエトの姿がとても楽しいですが、それだけじゃなく、北嶺と帝国の歴史的秘密が見えてくる展開に興味を惹かれること請け合い!超オススメです!→上巻感想 / 下巻感想


普通の社会人であるこかげが、異世界の騒動に巻き込まれるお話。

wonder wonderful 上wonder wonderful 下

やさしさで涙する物語でした。あ、もう最高!王宮話やら恋愛要素やらも非常に楽しく、読み進めるにつれてゴロゴロ転がりまわりたくなること必至です!今年一番のオススメ!→感想 上/ 感想 下

なかのひと

Page Top