「でもそれは真壁さんが考えてるだけでしょ?由加里さんがどう感じるか、真壁さんにわかる?」
「いや、けど、普通に」
「普通!?普通って!」
翠はおかしくて、悲しくてたまらない、という顔で覗き込んだ。
「明日死ぬかもしれない場所にわざわざやってくるような人が、普通を他人に押しつける?」
大地震により現れた大迷宮。そこに住む怪物たちは、地上では安価に手に入らない化学成分を有していたことから、怪物を倒し、それを換金することで、多大な利益を得ることができた。そして、今日もまた、ゴールドラッシュを目的とするものたちが、死亡率14%という地下探索の志願者としてやってきて……というお話。
これは面白かった!
迷宮探索事業の第二期募集に参加した者たちの話から始まり、いろいろな人たちの視点で物語が語られていくんですが、各章の最後には、第二期募集に合格したばかりの真壁啓一の日記が挿入されるので、迷宮街のこと、事業のシステムのこと、人間関係などを、読者は真壁と一緒に把握していく感じになりますね。
ただ、地下へ行って怪物と戦うというのはなく、訓練をして隊を組んで、地下へもぐるという手順をきちんと踏んでいるため、非常にリアリティがあります。
初めて地下へ潜ったときの緊張感もすごかった。訓練のときは動けたのに、実践になったら、ただただ武器を振り回すしかできないパニック状態に陥ったりする、その気持ちがとてもよくわかります。仲間がいなかったら、ほんと精神があっちに行ってしまうかもしれない。
そんな初心者探求者が成長していく姿もいいですが、地下はそんなに甘くなく。例え強くても、強くなっても、一瞬の油断が死を招くんだから、地下にいるときの緊張感は高まります。死が間近にあるってことは、そこいらで描写されていて、初めて知り合いを亡くしたときの重苦しい雰囲気や、怒りを発散させる戦いなど、いろいろありましたが、一番胸に来たのは、地下へ潜る人たちではなく、迷宮街で働く人の言葉でした。
「ある日ね、お店に来なくなるのよ。明らかに私のシフトにあわせて缶コーヒーを買いに来ていた人が」
気づいてしまったら、日常が一転しますよね。彼女たちの思いに胸が苦しくなります。
いやあ、面白かった!文句なしでオススメ!
戦いや、そのための訓練の描写が多いですが、人間関係の面白さや恋愛要素もあるから、非常に魅力的なんですよね。真壁の遠距離恋愛と、近くにいる美少女・翠の関係はどうなっていくのかとか、今どきっぽい女の子・鈴木秀美(自己ツッコミメールはほんと楽しい)の実力のほどとか、少しずつ変わっていく死への思いとか、興味あることいっぱいです。
迷宮の中のお話だけじゃなく、外のお話も展開されていて、特に一手に事業を引き受けてるところが、なにやら動いてるので、そっち方面のお話も見えてきたりするのかしら。
全三冊らしいので、期待して中巻・下巻を待っていたいと思います。ちょー楽しみ!
迷宮街クロニクル1 生還まで何マイル? (GA文庫)
林 亮介
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Comment:1
- ジャラル 2008-11-23 (日) 16:02
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ご存知の方も多いですが、いわゆる「ウイザードリィ」、迷宮を探索してモンスターを倒してアイテムを得て・・・というコンピューターゲームの元祖にオマージュを捧げているゲームですね。まあ『薔薇のマリア』や『アラビアの夜の種族』などもそうですが・・・。
このweb小説、一度『迷宮街輪舞曲―晴れた日には剣を持って』という題名でマンガ化されています。あの作品はモンスターのデザインが今ひとつで、ストーリーも結末が・・・でしたが、こちらはどうかな?








