「一緒にどうかな、ミス・アマディア」
「え?わ、わたし?」
「どうせなら美しいお嬢さんとご一緒できた方が、でかい猫もどきや、ちっこいガキと飲むより楽しいのでね」
それに、とサリエルは、精霊たちの抗議の視線を涼やかに無視し、アマディアにぱちりとウィンクを投げた。
「せっかくだ。いまをときめく天才ヴァイオリニスト、ダン・サリエルの演奏。キーラ家の令嬢にお聴かせしようではないか」
新進気鋭の音楽家にして神曲楽士の俺様なダン・サリエルとその契約精霊のモモが、演奏を通じて音楽の楽しさを伝えてくれるお話です。
いやあ、楽しいなあ。
ポリフォニカシリーズにしては珍しく連作短編なんですが、その一話目「ダン・サリエルと白銀の虎」が、最高に素晴らしい。神曲奏界ポリフォニカの「ぱれっと」を読んだ方なら覚えていると思います。偶然出会った上級精霊コジと契約するために、サリエルが赴いた町で、<七楽門>のキーラ家に生まれながら落ちこぼれていたアマディアという少女と出会って、というお話なんですが、音楽という見えないものに挑む苦しみを感じさせながらも、楽しむための音楽を説き、実演していく姿は、その傲慢な態度に似合った魅力がありました。この演奏シーンは、何度読んでも感動するものがあります。
アマディアとコジは、このあともずっと出てくるんですが、何気にコジがいい味出してくれるから見逃せません。
二話目の「ダン・サリエルと栄光のヤマガ00壱型」は、ポリ赤のツゲ事務所の面子が登場するんですが、これはすっごい楽しかった。ユフィンリーの意外な一面を見た気がしますが、あー、でもサリエルを同属嫌悪するってのは何となくわかるなあ。コレクターな二人が自慢しあい、子供っぽい意地の張り合いから、ついには……ってところで、お約束の連続が飛び交ったときは、吹き出しそうになりました。今後もこの掛け合いは見たいなあ。
ここまでのお話だと、サリエルは音楽家としての自信を持つ男のように思えるんですが、実はいろいろと迷ってるってことが見えるのが「ダン・サリエルと孤高の老楽士」。学生たちの音楽祭に招待されて、トリを演じることになるサリエルなんですが、昔ながらの音楽とは一線を画したものを作り上げながら、足りないものが何かを分かっているが故に迷う姿は、普段傲慢に振舞いながらも、音楽というものには真摯に取り組んでるんだなということを伺わせてくれます。
おかげでサリエルはやや暗いですが、その分モモが見せてくれましたね。周囲から見たら兄と妹ぐらいの雰囲気なんでしょうけど、本人はデート気分で、大好きなサリエルと一緒に学際内を回る時のテンションの高さが可愛いったらないです。なんで、こんな素直ないい子が、あんな男の契約精霊になっちゃうんだろうと思うことは幾度もありましたが、今回のようにサリエルが迷うときは、その素直な心で導いてあげてるんだなあと思うと、なるほど、お似合いなコンビだと思う次第。
最後の一話は「モモ・パルミラ・ファルスタッフの幸せな一日」という、まったく持ってタイトルどおり、モモの虐げられる一日が描かれていくわけですが、最後のシーンを見ちゃうと、ああ、幸せなんだなあと思えて、思わず頬が緩んでしまいます。短いけど温かいお話でした。
いやあ、面白かった。コミカルでありながら、音楽シーンでは心震わせてくれる感動を見せてくれるから素敵です。
これはぜひとも続きをお願いしたいですね。
神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエルと白銀の虎 神曲奏界ポリフォニカシリーズ (GA文庫 あ 4-1)
あざの 耕平
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- ジャラル 2008-09-14 (日) 13:48
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管理人さんの言うとおり、長編シリーズの多いポリフォニカシリーズにしては珍しく短編シリーズなんですが、「戦闘シーンが全然無い」というのもポリフォニカシリーズとしては異例ですね。アクション満載の「BBB」シリーズの作者あざの耕平先生なので、これはワザじゃないかな?と思います。
というのは先月発売した「GAマガジン創刊号」の中の榊先生との対談で「三味線とニート」(築地俊彦先生の「ぶるう」シリーズ)のインパクトに対抗する旨を言われていましたから、意識的に戦闘シーン無くしたのでは?と思います。
まあ楽しみにできるシリーズが増えました。GAマガジンにい早速短編新作が載っていましたので、こちらでの連載が楽しみです。
- deltazulu 2008-09-15 (月) 19:49
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あー、そういえば戦闘シーンがありませんでしたね。にもかかわらず、ここまで読ませるんだからすごいです。
GAマガジンに短編が載ってるってことは、今後も普通に続くってことですよね。すっごい楽しみです。








