「だから」
祈るような口調でコーティカルテは言う。
「百万の精霊の代わりに私が働こう。百万の精霊の代わりに私がお前を支えよう。百万の精霊よりもより強大な力となってお前に仕えよう」
美しい顔が何かを恐れるように伏せられる。
「それでは、ダメか……?」
十二年前ぶりに再会し契約を結んだーティカルテに振り回される毎日を過ごすフォロンは、いまだ彼女の神曲を奏でることができず、彼女を怒らせて……フォロンの学生時代を描いたお話です。
コーティ可愛いなあ。一緒に暮らせることの嬉しさをこれでもかと見せてくれます。まあ、甘えるのは苦手なので命令形になってしまい、フォロンに伝わらないってのは、今と変わらないですが。
そんなコーティに振り回されながら学業するフォロンですが、低級精霊を呼び出せないのに、上級精霊と契約しているというチグハグさに悩む姿は、まじめ過ぎるが故かな。自信がないから、基本に忠実であろうとし、それが故に神曲としての魅力を失っていくという泥沼は、傍で見ているコーティからしたら、もどかしかったんじゃないかしら。
コーティが怒るのは、自分のことではなく、フォロンのことなんだけど、そこに気づかないから、前に進めないわけですね。
このあたりは、イラつくものがありましたけど、そもそも何のために神曲を、というあたりを自問するようになってから、ちょっとずつ変わっていったのが印象的でした。それに気づいたときのシーンは、とてもよかったですね。それまでは曲を奏でることが億劫だったのに、早く試したい、早く弾きたい、夢中になって譜面を起こし、ただ一人のために曲を奏でるシーンは、コーティならずとも感動するものがありました。
思いっきり告白めいたことを告げるコーティカルテでしたけど、きっとあのときの言葉は、恥ずかしさとか全くなかったんだろうなあ。あとからどう思ったかはわかりませんけどね!とニヤニヤして読み終える。
楽しかった。
神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS 1 神曲奏界ポリフォニカシリーズ (GA文庫 さ 1-10)
榊 一郎
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