「もう、困ったな、どうしよう」
「何がどうしようや。つか、おまえ仕事に行ったんとちゃうんか」
「そうだけど、あっち側がまたおかしなことになっちゃってて」
「おかしなこと?」
「朝から夕焼けなの」
こちらの世界とあちらの世界の狭間にある「空栗荘」に住むことになった高校生・太一が、ちょっと不思議な出来事や妖怪たちの騒動に巻き込まれるお話の第二弾。今回は「薄売り」と「夢の交い路」というお話が収録されています。
あー、やっぱりいいなあ、この雰囲気。どこかのんびりとしていて、どこか温かくて。今回は、どちらのお話も夕焼けが印象に残るんですが、まさに、この夕焼けを見たときのような、温かさとちょっとした寂しさを味わえますね。
「薄売り」では、大家さんが寝っぱなしで目覚めないという異変が襲っているにもかかわらず、みんなどこかのんびりしていて、様子を見に来る妖怪たちも、なんか、こう、ほわほわっとしてて、距離感がいいんです。何一つ問題が起きないで、空栗荘の一日を描かれたとしても、僕は満足してしまうかもしれない。
ともあれ、采菜の弟が薄売りに連れ去られてしまったかも、というあたりから、お話が動いていくんですが、怪談としては良くあるパターンを踏まえつつ、ちょっと目新しいものがあったりするから面白い。そうか、飴って、そういうものなのか。
っていうか、事件の解決に一役買ったアカネの無邪気な姿が、笑いを誘いつつ癒されますね。
おかげで、ちょっと違う形ではあったものの、采菜も思いを伝えることができたし(はたして太一はわかってくれたのだろうか?)、弟も帰ってきたし、ほんと良かった。これからも采菜には頑張ってほしいな。
そのお話の続きで、いまだ眠ったままの大家さんを起こさないと、というところから「夢の交い路」が始まるわけですが、ここでは太一の心情の移り変わりが見えてきましたね。今まで他人との付き合いには、どこか壁を持っていたのに、共に「空栗荘」に住む仲間として、一歩踏み出してくれたのは、うれしく思いました。
他人の悲しみを自分のように感じて涙するシーンは、それまでの太一を思うと、心に染み入るようなものがありますね。
いったい、大家さんが眠りから覚めないのはなぜか。という謎については、言われたら、ああ!と思うにもかかわらず、まるっきり頭の中に浮かび上がらなかったのは、見事にミスリードされちゃったからでしょう。
驚きつつも、妖怪の素性に、そして大家さんの見る夢に、しんみりさせられるものがありました。
会いたいと思う気持ちは、こんなにも、人の心を動かすものなんだなあと思った次第です。
いやあ、良かった。
一巻から一年以上待たされましたが、今後もゆるゆると続けてほしいなあと思いました。続きがとても楽しみです。。
カラクリ荘の異人たち 2 ~お月さんいくつ、十三ななつ~ (GA文庫 し 3-2)
霜島 ケイ
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