「あの子は、いないけど『いる』のよ」
「そうですね」
傍から聞いたら、多分受け流しているような言葉だろうが、実は実感をこめて言った。
だっているから。彼女の息子さんの涼祐くんは、いないけど、いる。
今も彼女の隣に座って、あたしをじっと見つめている。
不思議なものを見たり、遭遇してしまう体質の少女・香絵が、バイト先の探偵事務所で遭遇するちょっと不思議な出来事を追う物語の第三弾。今回は、四年前、小学二年生のときに亡くなった中嶋佳澄の息子、涼祐の「今」の学校での様子を調査をしてほしいという不可解な依頼が舞いこんできて、というお話。
普通だったら、お母さんの妄想だと思ってしまうんだけど、「見えて」しまったら、香絵としても放っておけないですよねぇ。依頼してきたお母さんも何かを隠していて、「見える」涼祐も何かを知っていて。
さらに、涼祐に引っ張られて、彼の友人だった海斗と出会ってみたら、彼もまた何かを隠してる様子が伺えたので、一体なんだろうと読み進めてましたが、海斗のお父さんが、探偵事務所の先輩・南治さんだから、話が微妙に複雑になってくる。
いや、複雑と言うか、南治家の家庭の事情が複雑で、父は子に、子は父に、どういう態度で接すればいいのかわからないってところがね。普段、格好いいのに、子に対するときだけ、おろおろする南治さんが可愛く思えたのは余談。
なぜ涼祐の学校での様子を知りたがっているのかってことが、海斗の「力」と関連してきて、だんだんと見え始めてくると、涼祐の死から見える物語が、逆になってくるところに、ポンっと膝をたたきました。そうか、受け入れてなかったのはむしろ……か。
南治家と中嶋家の確執については、真面目で不器用な人たちの思いが見えて切なくなりましたが、グミという存在によって、それぞれの思いが橋渡しされたところには、温かい涙がじんわり。
この人の見せてくれる雰囲気って、ほんといいなあ。
続きも期待です。
そうそう。登場機会が少ないけど、いい働きを見せてくれる社長が大好きなんで、社長による番外編が読みたいなあと思ったりする今日この頃。
神様が用意してくれた場所 3 いつかの少年
矢崎 存美
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