四人の作家が、神曲奏界ポリフォニカの世界観を用いて、物語を紡いだ短編集ですが、これがまた素晴らしい作品ばかり。三田さんは既存のキャラを利用した物語を、他の三人は独自のキャラクタを主役とした物語を描いてくれてます。
以下、一編ずつ軽く感想など。
たとえ時が経とうとも(As Time Goes By)
三田誠さんのお話は、ポリ赤に登場するサイキ・レンバルトを主人公にした物語でした。仕事のことで腐っていたレンバルトが、場末の酒場で年老いたピアニストと出会って、というお話。これは、渋くて味わいのあるお話だったなあ。周囲の評価とは裏腹に、自身を天才と思っていないレンバルトと、老人が、酒場でのセッションを通じて、心を通じ合わせていくところが、とても素晴らしかったです。意表をつくようなことはないですが、誰もが頷くような堅実さがありましたね。きれいにまとめられたお話にうっとり。
音色は遠く、耳に届かず
浅井ラボさんのお話は、裏組織の暗殺者として働く名も無き殺し屋の物語でした。神曲楽士でありながら、暗殺者でもあるという殺し屋のヒトリ語りで物語が進んでいくんですが、人としての感情に欠落するものを感じさせながらも、何か足りないものを渇望しているような気がして、それでも殺しをやらねばいけないという展開に、切ないものを感じてたんですが……まさかまさかな展開でした。なんと切なく、なんと残酷な物語なんだろう。最後のフルートの音色は、きっと、心を表しているんじゃないかと、そう思います。
この物語を「ポロリもあるよ」と言える浅井さんのセンスって……。たしかに嘘は言ってないけど、言ってないけど、あぁ……。
ワイルドウェスト・いえろー
神野オキナさんのお話は、まさかまさかのコラボレーション。神野さんの別シリーズ「あそびにいくヨ!」から、アントニア、ろく、へいほんが登場して、辺境治安官ブックスの命を狙ってきた悪党を倒すお話です。
ぶっちゃけ、神曲はあまり関係ない気がしたけど、異世界にきても、慌てることなく、らしいことしてくれるアントニアの姿に、思わず頬が緩んでしまいましたね。見るものに光を与える誇りって素敵ですね。たぶん、「あそびにいくヨ!」を読んでる人なら、楽しめるんじゃないかな。知らないと逆に微妙かも。
ダン・サリエルと白銀の虎
あざの耕平さんのお話は、著名な音楽家であり神曲楽士でもあるという新進気鋭のダン・サリエルが、偶然であった上級精霊に契約を求める物語です。最高、これ最高。
新進気鋭ってことで、何かと傲慢な態度を取るダンが、実は自身の芸術性において、自信を持ちきれていないことが伝わってくる白銀の虎・コジとのやり取りが印象的でしたが、それ以上に良かったのは、既に契約する人間は決めていると言ったコジの相手、小さなあがり症の女の子、アマディアへ掛けた言葉ですね。一見、傲慢で、他人の評価しか求めていないように思えたサリエルの本音は、心に突き刺さる思いでした。
口だけの男じゃないことを知らしめたあの酒場での演奏のシーンは、絶品でしたね。伝わってくる雰囲気のなんと楽しいことか。ああ、素晴らしい。このシーンだけでも傑作って言葉を使いたくなります。音楽に対する迷いを持ちながら、聴衆の望む曲を作り上げていく姿に、かっこよさを覚えました。
ちなみにサリエルには、女の子の契約精霊モモがいるんですが、この子が可愛くて可愛くて。サリエルが他の精霊と契約しようとすると拗ねて、でも褒められるとすぐに機嫌を直しちゃうところとか、サリエルために一生懸命新たなことを覚えようとするところとか、健気で。ちょっと抜けてるところがあるけれど、何だかんだいってサリエルのお気に入りでもあるんだなってところにニヤリ。最後は楽しいオチまでまとめてくれて、精霊と人間との関係に、またひとつ魅力を与えてくれましたよね。
いやあ、どの作品も面白かったですね。満足満足です。特別な設定とかが現れてるわけでもないので、神曲楽士と妖精とかの大まかな関係さえ知っていたら、他のポリフォニカシリーズを読んでない人でも、楽しめるお話になってるんじゃないかしら。個人的には三田さんとあざのさんのお話がかなーりお勧めなので、ぜひぜひ手にとってもらいたいですね。
オススメ。
神曲奏界ポリフォニカ ぱれっと
浅井 ラボ あざの 耕平 神野 オキナ 三田 誠
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- ジャラル 2007-08-18 (土) 10:22
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スゴかったのが『音色は遠く、耳に届かず』でした。浅井先生のライトなあとがきとダークな本編とのギャップがなんとも・・・。この殺し屋とレンバルトの「下位精霊使い」同士の対決が読みたいですね。
『ダン・サリエルと白銀の虎』はまったく戦闘シーンが無くても、このシリーズの世界観を表現している作品でした。このメイド精霊と天才音楽家のコンビには、また会いたいものです。
- deltazulu 2007-08-21 (火) 10:30
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> この殺し屋とレンバルトの「下位精霊使い」同士の対決が読みたいですね。
あー、その戦いは面白そうですねぇ。実力ならレンバルトかなと思うけど、戦い方を考えると、殺し屋のほうが……とかいろいろ想像しちゃいます。> このメイド精霊と天才音楽家のコンビには、また会いたいものです。
これはほんと続きが読みたいです。むしろ長編で!





