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八の弓、死鳥の矢 戦塵外史 ニ / 花田一三六

普通の弓は、二人がかりで弦を張るから「二」と呼ばれる。名も無き男の弓は「八」だった。すさまじい膂力だったが、戦争で村は焼かれてしまった。やがて男は暗殺者となり、百本目の矢の相手として、皇帝を狙うことになったが……

表題作「八の弓、死鳥の矢」を含む六編からなる短編集ですが、いやあ、すごい。どの短編も良かったですね。惚れ惚れします。

八の弓、死鳥の矢」は、暗殺者と皇帝のやり取りを描いたお話ですが、ほんのひと時のやり取りなのに、これほどまでの決意が見れるとは思わなかったです。たったひとりの言葉が、後の覇者を生むこともあるんですよね。
壮絶な死が、逆に強さと優しさを感じさせてくれました。締めの言葉が、妙に心に残ります。

長引く戦に、父親が率いる軍は負けると予測したダリウスの退却戦を描いた「ルクソール退却戦」。退却の話もさることながら、ダリウスが生涯の女性に出会った話でもありました。そういえば、前作でダリウスの側には、そんな前職を持つ女性がいたなと思い出して思わずニヤリ。あれで惚れるかどうかは別として、男っぷりは昔から変わらないんだなあ。
敵であるシャルフも非常に魅力的な人でした。こっちの話も読んでみたいですね。

九十六度も戦場を駆け巡った傭兵の最後の戦い「架橋」のハードボイルドったらないです。華やかさなどまるでない戦場の過酷さを誰よりも知ってるからこそ、離れられないというのは、矛盾しているようですが、わかる気がしますね。言い聞かせるような言葉は、飾らないだけに厳しいですね。
かつて暗殺者に殺されそうになった皇帝がここに出てくるとは思いませんでしたが、あのときの命は、まだ尽きなかったということか。この皇帝の話も読んでみたい。

伝令という役割の重要さと危険を描いた「いちばん長い夜」は、裏切りと紙一重の話でもありました。情報という点において伝令は重要ですが、逆に一兵に重要な情報が掴まれていることは、味方のほうが危険に感じるのでしょう。信頼なるものは、戦場では無いという辛辣さが痛いですが、そのことを理解して、それでも戻ったイスワーンの強さが素敵。
駒として使うというのは、王として必要なことなのかもしれませんが、それでも最後の言葉には、イスワーンへの信頼を感じました。かっこよすぎる。

冷厳で、でも国王の補佐役として有能な「ジェラルスタンの策士」フーシェの物語は、この短編集のマイベストです。他人にも自分にも厳しく、国王にすら苦言を避けない。実際こういう人がいたら、疎まれるでしょうね。それでも私利私欲がなく、国王のために働く姿を見たら、文句は言えないだろうなあ。
彼の策士っぷりもいいですが、そんな彼にもどうにも攻略できない策があるってのはいいですね。男女の仲は、そう簡単にいかないってところが微笑ましいったらありゃしない。
最後が意外に甘くて、もう大好き。

そんな冷厳たくましきフーシェが弟子を取る「策士の弟子」は、弟子となったセフィードの話でありながら、フーシェの印象が強かったですね。ますます凄みを感じました。常に一歩先をいくところがさすがです。ひとつひとつ試験をクリアしていくことで、フーシェの信頼を得ていくセフィードも良かっただけに、もっと読みたかったなあ。葱という似た者同士の話には笑いました。
下世話な想像については、ある意味正しいとは思うけれど、二人でいるところを見たからこそ、惹かれたんだと思うので、敗戦というのは可哀想かなと思ったり思わなかったり。

いやあ、面白かったですね。独特の文章と雰囲気がとても心地いいです。次はどんな物語になるのかと思ったら、この二冊で登場したオールスターキャストが活躍する話だとか。
これは期待に胸が高鳴りますね。

戦塵外史 二 八の弓、死鳥の矢 (GA文庫) - 花田 一三六

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戦塵外史2 八の弓、死鳥の矢 花田一三六 GA文庫 from ねれの巣 2007-04-10 (火) 11:54
以前、発刊されてました作品の加筆修正でして、短編がいくつか集まっています。架空戦

Comment:2

ジャラル 2007-02-18 (日) 13:36

角川から出版したけど文庫本にならなかった作品の文庫化です。かなり時代的に隆慶一郎さんの影響が見られますね。次巻は「ジェラルスタンの策士」フーシェVS前巻にも出てきた皇帝陛下の大陸統一をかけた一戦です!

deltazulu 2007-02-19 (月) 19:58

ホントですか!?
やばい。すごい楽しみ。

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