禁断の魔法術で魔法王国から異郷へと転移しようとしたシーヴァとレイアードだが、どうやら違う場所へ来てしまったらしい。魔法力がほとんど存在しない世界に戸惑っていたふたりは、コミ溜めのようなその場所で、ひとりの少女を助けた。
コトリという自分の名前以外、すべての記憶を失っていた彼女は、実は機械人形で……
魔法王国の王子が、機械の力が支配をしている機械帝国で、コトリという少女に出会ったというお話ですが、生身の人間が肩身の狭い生活をするという機械帝国でのレジスタンスっぽいお話でもあるかな(そこまでじゃないか)。
無邪気で好奇心旺盛なシーヴァと、冷酷なわりにシーヴァのことでは冷静でいられないレイアードのやり取りが楽しいですね。そこに、明るい女の子の神、星華が混ざると、さらににぎやか。魔法力がほとんどなく、まったく情報がない世界に来たというのに、あまり不安を感じさせず、仲間っていいなと思わせる展開は良かったです。
機械化されていない体は、狩りの対象になりやすいという世界は、なんともわかりやすくおぞましいですが、ひょんなことから知った事実には、憎悪と嫌悪と侮蔑と、そのあたりの感情が一緒くたになったものを感じました。何気にグロテスクだなあ。
逆に支配側としては、非常に効率よいやり方をしていますね。あっさりひっかかるあたり、シーヴァに危機感なさすぎですけど。
このシーヴァの自分勝手というか、他人を意識しないで動きまくるところが、どうにも馴染めなかったなあ。自分は縛り付けたくないから神と契約しないけど、相手の神は利用するというのは最たるものかな。無邪気さには好感が持てただけに、なんとも複雑な気分。レイアードの捻くれっぷりは、かなり好感度高かっただけに、主役に微妙なところがあったのは、ちょっと残念。
行き過ぎた優しさから、狂気に走らざるを得なかった人の心情はわからなくもないですが、むしろ、この場合はコトリの心情がつらいですよね。板ばさみに合う姿は、何とも心苦しいものがありました。
それでも、最後に希望が見えたのは良かったですね。辛いことを心の中で整理できるということは、人ならではなのかもしれません。
ひとつひとつのシーンや登場人物たちの絡み合いは面白いんですが、世界観と登場人物の行動が、いろいろギクシャクしてるところがあって、そのあたり違和感がありました。ひょっとしたら些細なことかもしれないけど、一度気になるとどうもね。
個人的には続編よりも過去編が読みたいかな。シーヴァがなぜ銀の手を持つことになったのか、弟や許婚との確執、レイアードの心の傷は何なのかなど、いろいろ匂わすだけで終わっているところが多かったので、非常に気になります。
銀の手のシーヴァ ハカセとコトリ
立原 透耶
ソフトバンク クリエイティブ(文庫)
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立原透耶 / GA文庫 / ライトノベル
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