「流れた血は同量の血により沈める、付けられた傷は同量の傷により沈める、奪われた魂は同量の魂により沈める。つまり」
「つまり?」
「復讐だ」
宝島社から献本をいただきました。
ネズミに似てることからマウスと呼ばれた男が、借りのある高校時代の教師の娘・まことから、助けてほしいので結婚してくれと言われて……少女を守るため、愛する姉、惚れてきた男、じゃれてくるAIと共に、横浜を駆け回るお話です。
これは意外に面白かった。
くそったれという文字が踊る一人称の語り口は、はっきりいって読みにくいんだけど、勢いに乗せられてがっつりいってしまう。美しくもお股パカパカな姉の偏愛や、横浜でトップクラスの力を誇りながらマウスが好きなミチルちゃん、騒動の原因を持ち込んで騒ぎまくったわりに影の薄いマコチンなどなど、個性豊かなキャラクタたちに持っていかれちゃうんです。ちなみに一番可愛いのは、防犯システムのAIだったりする。なんだこれは。
助けてほしいと言ったわりに、何をどうすれば少女を助けられるのかといったあたりがなかなか見えないので、中盤まではもどかしいんですが、「ブレイン」システムをキーに、「復讐」が見えてきたら、ようやく物語が動きだして、一気に加速していきます。ここからは本当に面白かった。予想もつかないところから刺されたり、拉致や保護など、危険にドキドキさせられたと思ったら、母の愛を伝えてくれる人の想いにグッときて。
ちょっと勘が良すぎるきらいもあるんだけど、ピカレスクでスピーディな物語は、とても面白かった。すべてを許しちゃう感覚と、人を愛する想いに、そら恐ろしさを覚えたりもしたけどね。
あとがきを読んで、これがはじめて書いた小説と知り驚きましたが、このあと、どういう物語を見せてくれるのか。続きにしろ、別の話にしろ、楽しみです。
第1回「このライトノベルがすごい!」大賞「栗山千明賞」受賞作。
ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)
大間 九郎
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