「コトモノに関わるのは面倒くさい。本当に面倒くさい。だけど、僕にはそんな面倒くさい生き方しかできない。僕に残された唯一の選択肢を、誰かに壊させるわけにはいかない。これ以上、『物語』を壊させるわけにはいかない。だから、僕は動くんだ」
宝島社から献本をいただきました。
脳の変質により、異なる形で世界を認識する人たちは、遺言詞と呼ばれるコトバによって生まれしケモノ—コトモノと呼ばれるようになった。社会は人間とコトモノの共存を模索し続けていたが、そんなある日、コトモノが襲われる事件が発生した。事件を追う警察に協力する形で、他人のコトモノを記述する能力を持つ武藤吾郎(通称ロゴ)は、やがて犯人が六年前に別れた幼なじみである可能性に気づき……第1回「このライトノベルがすごい!」大賞「大賞」受賞作。
序盤はちょっとコトモノのことが掴みづらいんですが、見えてきてからのサスペンスと、人と人の思いを描く展開は、とても良かった。
同じ人でありながら、コトモノは別の世界を見いだし、たとえば、視力が弱い代わりに異常な聴力を持つ、あるいは自分は猫だと思い込む、あるいは集団で感覚を共有する、あるいは動物と意志を通じさせるなど、異能というより認識のズレみたいなものなんですが、その人たちからしたら、世界はそう見える。
同じ感覚を共有しない人たちからしたら、どうしたってわからないが故に、お互い壁が出来ていくんですが、そんな中、コトモノ狩りをする者が現れて、襲う人、襲われる人がロゴに関係している人であることが見えてくるところから、物語が一気に加速していきます。
かつて自分に物語を語ってくれた幼なじみが、コトモノを襲うなんてと信じられない思いを抱きながら現実を目の当たりにして、過去を思いだし、彼女の傷ついた思いを見つけて、近づいたと思ったら離れてしまう、届いたと思ったら突き落とされる、そんな展開の繰り返しは、スピーディさと裏腹に重苦しさを増していくばかりで……
コトモノを巡り、「赤の女王」がまとめる集団が動き(ちなみに僕は赤の女王みたいな人が大好きです)、ホワイト・ラビットという謎の言葉が事件の鍵を握り、コトモノを記述するというメタなコトモノを持つロゴが、何度も何度も間違って、相手の想いにたどり着けなくて、それでも言葉にして伝えることで、届く思いがある。そう思わせるラストが良かったです。
ランジーン×コード (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 お)
大泉 貴
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