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花散らしの雨 — みをつくし料理帖 / 高田郁

「けどね、澪さん。恋はしておきなさい。どんな恋でも良いんです。さっきは心配だなんて言いましたがね、あんたならどんな恋でもきっと、己の糧に出来ますよ」

訳あって上方(大阪)から江戸へやってきた女料理人・澪が、「つる屋」の調理場を任され、様々な創作料理で人々を笑顔にさせようとする人情物語の第二弾。今回は、下足番の少女を雇ったり、行き倒れ商人の味醂を使ったり、太一がはしかにかかったり、そして澪が恋を自覚する四編が収録されています。

今回も美味しそうな料理ばかり。でも料理を通して人の思いを描くからこのシリーズ好きです。

相変わらず美味しそうな料理ばかりでてきます。装いも新たになった「つる屋」は、以前とは若干異なる部分がでてきたものの、やってきたお客さんの喜びようは相変わらずで、料理人としてこんな嬉しいことはないんじゃないかしら。創意工夫を繰り返していく彼女の支えになるのは、まず身近な人に、そしてお客さんに世論でもらえたらという思いがあると思います。

新たなお店はお座敷があるので、履物整理をする必要があり、下足番としてふきという少女を雇うことになったんですが、何かと怯える様には、これまでどんな苦労をしてきたかわかって辛いものがありましたが、さらに彼女に背負わされたものの重さは……子供の思いを利用する人たちの悪意は遣り切れないけれど、ふきのことを思い、やさしさで包み込んで、少女を守るために啖呵をきった澪が素晴らしかった。奉公人として働かなければならない姉弟にはきびしいかもしれないけれど、幸せになってほしいなと思う。

味醂話もさることながら、ここで一番印象に残ったのは、太夫となった幼馴染の話です。会いたい、でも会えない。大切な人だからこそ、昔のきれいな思い出を胸にしてほしいという相手の思いがわかるけど、わかるだけにもどかしい。せめて自分にできることをと、なつかしの料理を心をこめて作り、思い出のこぼれ梅をキケンなところまで届け……きつねの形を作った手が伝える思いに、涙はこんこんと言いつつ、じわりと止まらなかった。いつか、いつかきっと……そう思いたい。

閉店時間が早くなったのは、通う澪を気遣ってのことでしたが、澪やご寮さんからしたら、あの長屋を離れたくないという思いはよくわかります。太一がはしかになり、そこから始まった病の連鎖は、ドキドキさせられるものがありましたが、親身になって看病し続けるご寮さんと澪の行動は、同じように親身になってくれた思いが動かしてくれたのでしょう。職人としてのプライドと家族への思いに揺れる人たちは辛いものがありましたが、無事峠を越えてよかった。
年の功よろしく歯のないおばあさん・りうの言葉と活躍も忘れられない。またちょくちょく出てきてほしいなー。

そして最後。看板料理となった胡瓜に、なぜか武士は手をつけないという謎が描かれるんですが、久しぶりに登場した小松原さんが鮮やかに解決してくれたところがすっごい嬉しい。っていうか、たぶん澪が嬉しいと僕も嬉しいんだと思います。どうやったら武士に食べてもらえるかを考えて「忍ぶ瓜」と名づけたのは、こっそりやってくる武士を指しているのもあるけれど、誰のために作ったかという、言えない思いも含んでるんじゃないかななんて思ったりしました。同じ名前であり、源斉先生に恋する美緒を応援したくなっちゃうのは、自分の思いに重ねてしまうからだと思います。……にしても、美緒のツンデレっぷりがやばいぐらい可愛いなと思ったのは内緒。

楽しくても拙くても大変なものかもしれませんが、澪の恋は幸せに繋がって欲しいと思いました。

花散らしの雨 みをつくし料理帖 - 高田 郁

花散らしの雨 みをつくし料理帖
高田 郁

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