「リュシアン、あんた本気でそう思うのかね?レーズスフェントを帝国自由都市にできると」
リュシアンは、あえてこともなげに問い返した。
「なぜできないと思うんです?この町は今まで、何者にも負けたことがないのに」
「ここに町を作りたい」―― レーズと名乗る女型の生命体の言葉を受け、荘園とは名ばかりの地に厄介払いされたルドガーが、自身の夢である「人が訪れたいと思う町」を作り上げていく物語。
これは最っ高に面白かった!
町を作るとはこんなにも大変で、こんなにも感動させられるものなのかと思います。ほんの数十人から始まった町が、橋を架けて、人が集まってきて。順調に行けば、当然横槍が入ってくるし、それらを避けつつなだめつつ、知恵を絞り。時に辛い目に合うこともあれど、全力を尽くしてレーズスフェントを興していくルドガーの姿は、この人にならついていけると思うものがありました。
ローマ帝国の時代よりも遥か昔から生きているレーズは、基本的には傍観者ですが、時に手を貸してくれるのは、ルドガーが、決して一方的に利用しようとは思ってないことがわかるからなんだろうなあ。時に誘惑するシーンがあるけど、あれはどっちかというと人を試すためのもので、ルドガーとレーズの間には、深い信頼が見えました。
ルドガーだけじゃなく、弟のリュシアンもまたレーズによって変わっていったひとりですよね。堅物でプライドが高く、はじめは居場所がなかったけれど、敬遠してたレーズの力に触れてからは、兄を支える存在として無くてはならないほどの人になり。この物語で一番の成長を感じたのは、彼だと思いました。
一難さってまた一難の連続を繰り返しながら、人の思いも描かれてて。特にルドガーの話は、ここで彼女と再会できたのかと、嬉しくなるものがありました。
町の復興には欠かせない子供たちの成長を見守りながら、これから平和を、と思っていたら、レーズの片割れとも言うべき存在が、レーズスフェントに目をつけて……。
圧倒的戦力差の中、ぎりぎりのところで戦いを続けて、もう限界だと思ったとき、レーズが町の人を集めたときのシーンは、胸に来るものがありました。どれほど身を切られるような決断だったのか、想像すらできませんが、彼女がどれほどレーズスフェントに、そこに住む人たちに好意を持っていたかが伝わってきて、じわりとさせられる
最後のほうは、もう涙なくして読めませんでしたね。ルドガーが弟に報告をしたときのシーンなんて、まさに号泣です。ああ、もう、やってくれる!
いやあ、面白かった!文句なしでオススメ!
終章では再び町を思わせてくれて、続きが出てくれたら……と思ってしまうものがありました。いや、ほんと面白かった。
風の邦、星の渚―レーズスフェント興亡記
小川 一水
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