「ずっとこのままでいいよ。このままがいいな。単なる男の子のサディのままで」
「今はそれでよくても……そのうち、かえって苦しくてたまらなくなるときがくるかもしれないわ」
「苦しい……?」
「ええ、見かけはどうであれ、周囲の扱いがどうであれ、あなたはやっぱり女の子だから」
音楽家だった亡き父の楽譜を探し出すために、弟のサディの名でロウエン王国の聖楽学院(女子禁制)に入学したアティーシャが繰り広げる騒動満載のスクールライフ第七弾。今回は、間近に迫った学院祭の準備に奮闘するお話しです。
クラスの出しものと、もうひとつ別で歌劇をやることになり、両方とも主要な役割を受けることになるから、大変だなーと思いつつ、いろんなところでニヤニヤさせられる。歌劇の練習では、ヒロイン役のアティと踊ることになるリキシス先輩の動揺っぷりや、別のところでは、正体を知ってることを明かしたサリアンが見せる紳士っぷりに。ああ、もう頬がゆるんで仕方がない。
おそらくは最後になるであろう学院祭ってことで楽しみにしながらも準備に奔走して、いつのまにやら他のクラスと勝負することになったりするから、男の子ってやつは……と思いますが、嫌なヤツ代表といってもいいラシード先生の意外な弱点を発見しながら、クラス一丸となったり、女友達であるマデリーンとのかしましいやり取りで、恋愛を意識するようになったりして、ちょっとずつ変わっていくアティを見ることが出来たのは楽しかった。
でも、自分が誰を好きなのかという点については、いまだ自覚しておらず、そんな中、ジェッツがちょっとうるさいアティを黙らせるために、とんでもない手を使ったところは……やり過ぎだよなあと思うぐらいには乙女心を持っております。でも、災い転じてじゃないですが、ネイトから温かいものを受け取って、さらには赤くなったりして、終わりはとても良かった。
自覚するのはいつになるか判らないけれど、これまで以上に優しいネイトにきっと……と思いたい。
さて、まだ学院祭は始まっていませんが、そういえば、サリアンとエルシオンの話もあるから、そのあたりの騒動とかあるのかしら。
聖鐘の乙女 恋の歌劇と薔薇のドレス (一迅社文庫アイリス)
本宮 ことは
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