「……ねえ、ラス」
「なんですか、マスター」
「今まで、こんなことに巻き込まれて面倒だとか嫌だとか厄介だとか思ってたんだけど」
「すみませんね、面倒で嫌で厄介なことに巻き込んで」
「でも、でもね、ちょっと今……わくわく、してるかも」
成績優秀スポーツ万能。だけど言動がきつくて鬼委員長の異名を持つエミリアは、実は単なる見栄っ張り意地っ張りな女の子。友達ができないことを嘆き、毎日図書館の隠し部屋で友達を作るれんしゅうをしていたが、ある日、練習相手の人形にキスをしてしまったら、その人形が動き出して彼女をマスターと呼び……自動人形の少年ラスと素直になれない女の子エミリアが、壁のある普通科と魔法科の橋渡しをする学園ファンタジー。
これは楽しかった!
クラスメイトを見たらキッと視線を向け、何かと厳しく注意することが多いのは、ついつい身構えてしまうからで、こっそり挨拶練習とかして、クラスメイトと何とか仲良くやりたいと頑張るエミリアが可愛くて可愛くて。
そんなエミリアをマスターと呼ぶラスは、偉大なる魔法使いが残した自動人形で、彼のおかげで、単なる人であるエミリアにも魔法の力が与えられるんですが、このラスがマスターをマスターとも思わない言動を見せるから、また楽しいんだ。
そんなふたりがキャンキャンとケンカする様には、とてもニヤニヤさせられるんですが、中でもやられるのは、ときおり相手への気遣いを見せるところ。ドキっとさせられる言葉や、不意に見せる素直さに、思わず悶えそうになることが何度あったか……
それまでエミリアには、どうしても友達ができなかったけど、魔法科に編入したことで、ちょっとずつ変わっていったのは、もちろん彼女の変わろうとする姿勢も大きかったし、異国から留学中の王子シヴァの導きもあったけど、何よりラスの存在が大きかったと思います。毎日ケンカしていれば、だんだんと感情の表し方はうまくなってくるものですよね。
ちょっとずつちょっとずつ変わっていき、これまでの習慣が一気に変わることはないから、壁にぶち当たって涙することもあるんだけど、魔法学園のトラブルを解決していく内に、友と呼べる人と仲良くなっていける展開が、とても良かったです。
いやあ、楽しかった。ツンデレ少女とツンデレ少年の恋物語って素敵じゃないですか。
何やら三角な関係もできあがりつつあるので、このままラブコメになってくれたら、どんなに嬉しいことか。ぜひとも続きをお願いしたいところですね。
文句なしにオススメ。
キスからはじまる契約魔法 少年魔法人形 (一迅社文庫 アイリス わ 1-1)
渡瀬 桂子
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