「へぇ……いい夢じゃない」
「親父なんかはクソの役にも立たないってバカにしたけどな」
冗談めかして笑ってみたが、雪乃は笑うどころか眉をしかめた。
「卑下したら怒るわよ。自分の夢を自分でバカにしないで」
「たしかにそうだ。すまん、夢」
精霊と人間が共存する世界で、教霊師を夢見て精霊指定都市の高校へやってきた土属性の埴本麒一郎は、バイトが縁で、火属性である同級生の美少女・雪乃と出会った。何かと馬が合うふたりは、夢のために学内の一大イベント「異種精霊障害乱走」レースに参加して……というお話。
これは楽しかった!
苛烈な火属性の美少女と、地味な土属性の男の子の組み合わせは、時に疑問を投げかけられたりするけれど、外見だけでは伝わらない相手の良さってのがお互い見えてるんですよね。
はじめはほんとただの友人っぽく、それぞれの精霊の力を競っていたのに、だんだんと距離が縮まっていって、付き合っていると言われると、そんなんじゃないと言いながら、相手がバカにされると怒れる関係になっていくところが素敵でした。
で、学費稼ぎのために、「乱走」に参加することになったふたりですが、朋霊との出会いや、強い相手と勝負することの楽しさなど、面白さに引き込まれるばかり。しかも、霊の導きでデートまでして……普通とは違うかもしれないけれど、素朴な幸せを伝えてくれるふたりに微笑ましさを感じてたのに……まあ、誰にだって触れられたくない傷ってのはありますよね。
彼女の弱さと強さを感じて、でも言葉の選び方を間違え彼女を傷つけて、そんな自分を許せなくなっても、言い訳よりまず彼女の重荷を取り除くために、前へ進む。そんな麒一郎の姿が格好良かったです。
いやあ、面白かった。最後までニヤニヤさせてくれるお話でした。こういうカップル大好きです。
これはぜひとも続編を読ませてほしいなあ。期待して待っていたいと思います。
土属性はダテじゃない! (一迅社文庫 は 5-1)
葉原 鉄
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