「演劇……部?」 思わず口に出して双葉は読んでしまう。やはり手芸部は存在しなかったのだ。
ただ、演劇部の存在に気付いてから、双葉はハッとする。
(……衣装を作るなんて……素敵かも!)
小さい頃から可愛いものを作るのが好きだった双葉薫は、手芸部に入ろうとしたけど、高校に手芸部がなかった。ならば衣装作りをと演劇部に入ったら、そこには超個性的な部員たちが待ち受けていて……というお話。
優しき部長、インチキ眼鏡な脚本家、脚本家にベタ惚れのヤンデレ女優、筋肉バカ、ドSな仮入部少女という部員の中に入部したのが、衣装係目当ての薫ですから、本格的な部活ではなく、演劇ごっこ的な感じのお話なんですけど、これがのんびりとした空気を作ってくれて、なんとも心地よい。
楽しかったのは、「家族」をテーマにしたロールプレイングですね。役割に沿ったアドリブを全員で演じていくんですが、ミスったらペナルティがあるので、だんだんと如何にペナルティを引かせるかってことに熱中していくやりとりがすっごい楽しかった。特に葵。あんたの悪辣さはドSとしかいいようがないです。笑いが止まりませんでしたよ。
ま、それもおままごとの延長って感じで、演劇部らしい厳しさはないですが、それでもみなで部活をやってるという達成感や仲間意識みたいなものがみれたのは良かったです。
そういえば、薫にはとある秘密があったんだけど、ぶっちゃけそれほど重要でもなかったような……。おまえら落ち着け!と言いたくなるようなシーンは楽しいものでしたし、超ピュアな姿には心惹かれるものがあるんですが、前面に押し出されるわけではないので、なんていうか、こう、いい意味で引っかかるものじゃないんですよ。
こういうところが、このお話の雰囲気を作り上げてるような気がします。
最後がちょっとつまり気味というか、話を終わらせるために急な展開になっていたのが残念だったかなあ。できれば恋愛要素はもっとじっくり見せてほしかったです。
ようこそ青春世界へ! (一迅社文庫 あ 1-1)
淺沼 広太
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