けれど、園子は別れ際に、ありがとう、と言ってくれた。ずっと一緒にいてくれてありがとう、と。
その時気付いた。手を握ってから、笑いはしなかったが、泣きもしなかったことに。
ああそうか。自分は笑顔にすることは出来ないけれど、泣かさないことぐらいは出来るんだ。
まるでお盆のように、彼岸から此岸へ、此岸にから彼岸へ魂を運ぶ幽霊列車。なぜか幽霊列車と新米車掌である紗月をみることができた匠海は、紗月のドジっぷりが放っておけなくなり、ある報酬と引き替えに、彼女の手伝いをすることにしたが……というお話。
ああ、いいなあ、この雰囲気。都会の喧噪はなく、星がきれいに見えるような、そんな土地柄を感じながら読んでました。これは匠海の性格のせいもあったんだろうけど。
小さな頃から幼なじみの女の子を泣かせちゃいけないという思いから、いろいろ目をかけてたら、お節介を自覚するぐらいになってて、気づけばドジっ子な幽霊まで面倒をみてしまうんだから、筋金入りと言うべきでしょうか。
紗月も幽霊らしからぬ明るさをみせてるかと思いきや、時に死について考えさせられたいするので、目が離せなくもなるんでしょうね。
運んできた魂についてのお話で、落ち込んでいた彼女にかけた言葉は、きっと大いに支えとなったと思います。そりゃ惚れるわな。うん。
このまま良い関係になっていくのかと思いきや、間に入ってきたのは幼なじみの綾芽でした。綾芽からしたら逆かもしれませんが、紗月と綾芽が同じ立場に立って、匠海の気を引くべく(というよりは、相手を悔しがらせるためにかな)、アピールしまくるやりとりが最高に楽しかったです。
それに気づかぬ匠海はどうかしてると思った。
そもそも匠海がお手伝いをしているのは、とある報酬があったからで、そのあたりに話が及んでからは、優しさのつもりが残酷なことになってたりして、ちょっとやるせないものがあったけれど、自分の思いに気づき、相手の思いに気づき……幽霊列車に向かって自転車をとばす姿に、爽快なものを感じました。
良かったです。
月色プラットホーム (一迅社文庫 み 2-1)
水口 敬文
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