「じゃあ、私はそのお祭りの夜に踊ればいいんですか?どんなダンスを?」
「それはわからん。必要になれば、さっきのように靴が動いてくれるかもしれん、じゃが、ぴくりともせん可能性もある。もし、いざ祭りの本番でステップが生まれなければ、お前はまた来年の祭りまでその体にいなければならん。そうならないためにも、あと一週間のうちに元の体に戻るためのダンスを見つけることじゃ」
思ったことを口に出せず、相手にあわせることばかりをしていた少女が、入れ替わりの魔法により、傲慢な魔女ベファーナの姿に!?ワガママでおバカな黒猫男ノーチェと、ハードボイルドなネズミのネズチューと共に、元の姿に戻る方法を探っていく……というお話。
いやあ、面白かった!
姿が魔女なおかげで、正体を知らぬものからは、非難の目を浴びたりするので、はじめは自分の境遇に嘆いてばかりいたルナでしたが、口は悪くとも、ベファーナのやってることは、実は未来へつながることなんだと見えてきたら、何とか間を取り持てないかと、少しずつでも行動していくあたりに、ダメ少女だった女の子の成長していく姿がうかがえます。
相手に合わせようとするせいで失敗もあるし、時にミスから目をそらしてしまうこともあるんだけど、自分を見つけ出していく展開はとても良かった。
また一緒に行動してくれるネズチューが格好いいんだ。こんなハードボイルドなネズミなら、我が家にも欲しいぐらいです。彼がいたからこそ、ルナも何とか頑張ってこれたんだろうなあ。でも、なぜか気になる人は、ノーチェになってしまうんですが。
元の世界に戻る方法を探しながら、共にすごして行くうちに、だんだんと気になってしまい、でも彼はベファーナが好きで、という関係が生み出す恋物語が素敵に切なかった。魔法が使えないと嘆いていたノーチェが初めて魔法を見せたときのルナとのダンスシーンは忘れられません。ノーチェが使える唯一にして最強の魔法のシーンも。
期限付きである以上、いつかは別れる。こんなシチュエーションを作り上げたベファーナには、正直憤りを感じたんですけど、これが実は……というベファーナの真意が見えたところではゾクゾクさせられました。こう繋がってくるなんて!
魔法を紡ぎだすダンスに魅了されるだけでなく、深い愛情を感じさせてくれるお話でした。オススメです!すべてはベファーナの手のひらの上……というと語弊がありそうですが、彼女の大切な人への思いが生み出した物語に、読み終わったあと、優しい気持ちにさせられます。
ワルプルギスの夜、黒猫とダンスを。 (一迅社文庫 アイリス こ 3-1)
古戸 マチコ
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