『信じてもらえないかもしれないけど』
お笑い種だと思った。
あの女は人間のものとはとても思えない目をしていた。虹彩は緑色とも黄色ともつかない色で、瞳孔は円くない。縦長だ。光の加減で、その瞳孔がすっと細くなったり、ふくらんだりする。まるで猫だ。
『……あたしは、この時代の人間じゃないの』
人を疑うことを知らない男子中学生・夏彦が、不思議と惹かれる謎の女性・トワコを襲う奇妙な事件に巻き込まれていくお話の第二弾。今回は、トワコのことで幼馴染の希有との仲がギクシャクしはじめる中、夏彦が、真鳥姉妹の父親探しの旅に付き添うことになって……というお話。
ああ、もどかしい。
臆することはないけれど、積極的に動くわけでもない夏彦なので、どうにも話が進まなかったりするんですが、ひとつひとつ段階を踏んで、いつまでも変わらないままでいられないことを経験していくところが良かったです。トワコとの出会いが視野を広げてくれたことで、逆に溝が生まれてしまうとは、何とも皮肉なものがあります。
希有もなあ、夏彦とトワコに対して、もっと言葉として伝えればいいのにと思わなくもないけど、それができれば苦労しないか。
というわけで、今回は希有があまり絡んできませんでしたが、変わりに出てきたのは、工藤という男の子。格好いいけど、女と見ればすぐさま声をかけるほど軽いのに、どこかさびしい雰囲気を見せていて。過去に大きな傷のせいか、ちょっと刹那的なものがありますね。それだけに夏彦のような雰囲気の持ち主に、ふと気を許してしまうものがあるんだろうなあ。彼の「力」らしきものについても気になるところ。
今回一番印象に残ったのは、真鳥姉妹の姉・依慧の心の変化ですね。織慧を守るために、姉として時に母として、愛情をいっぱいに注ぎ守る姿は、誰よりも頼もしく感じましたが、でも彼女はまだ13歳で。お世話になっていたおばさんの死を目の当たりにして、ふっと糸が切れたかのようになったり、消息不明だった父と出会ったときの、何かしたいけど、何をしたいのかわからない。そんな衝動に駆られる姿が印象的でした。
あのとき、側にいたのが織慧だけだったら、変に依存するか、あるいは大切な人をうとましく思ってしまったかもしれませんが、夏彦という存在がいてくれたから、泣くことができたし、頑なになっていた心が溶けていったんだと思います。あのシーンはほんと良かったです。
とまあ、少年少女たちの抱えるものを描きながら、夏彦という存在が少しずつ変わっていく姿を見ていたら、ラストでまたまた急展開がやってきました。あー、でもこれは辛いなあ。守りたいと思う人が多すぎて、守りきれない人が出てきてしまうのは……。たしかにトワコに危険が迫っていたけれど、それで希有から離れてしまったら、はたして彼女はどう感じただろう。
10年後に彼が進んだ道は、平和とは程遠いようですが、いったいどういう道を選んだら、たどり着くのか。まだまだ序盤ともいうべきお話だけに、先は長そうですが、続きを楽しみに待っていたいと思います。
ANGEL+DIVE 2 (2) (一迅社文庫 し 1-2)
十文字 青
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