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[西川真音] 零と羊飼い

「今の話を聞く限り、我々に助かる道はなさそうだな」
「たった一つだけ、方法があります」
ピーターは、深く吸い込んだ煙をゆっくりと吐き出しながら頷く。彼女の出す提案が、神に祈るだなんて馬鹿げた方法でないことを、神に祈りながら。
「レス系と呼ばれる異能者のことは、ご存知ですね」

巨大隕石により、地球は三週間ほどで滅びる。助かる道はただひとつ。各国に散らばるレス系能力者 ―破壊の力を持ち、物理的な危険を弾き飛ばす異能者― をシャトルに乗せて、隕石に向かって打ち出すこと。
そして、集められた三人の異能者、記憶を消す力のアキラ、光を消す力のアイロス、感情を消す力のウォルシュのうち、誰がシャトルに乗り込むか、ということを決めていくお話です。

いわゆる映画「アルマゲドン」みたいなお話かと思ったら、自己犠牲に酔うのではなく、皆、生きたいが故に、誰を向かわせるかということを話し合いで決めていくところが、なかなか面白かったです。

もちろん、とりつくしまのない人も出てくるんですが、逃げることができない状況で、仕方なしに話し合いに参加していくうちに、異能者になったきっかけ話などが見えてくると、何とも言えない思いになるんだよなあ。三人には、それぞれ思いあった人や、世話をしたい人、世話をさせられる人がいて、その人たちとの交流を得るうちに、またひとつ過去が見えてくるところとか、とても切なくなるものがありました。

カップル話の中で一番好きだったのは、記憶を消すことのできるアキラと、シャトルに乗せられることが決められている少女サイファの関係かな。感情を出すことを許されておらず、自我すらろくに持たないサイファを一週間世話して、もちろん、そう簡単に心を開くわけはないんだけど、でも、ちょっとした笑顔がひとつ見えるだけで、幸せを感じられるような、そんなシーンが素敵でした。

誰がシャトルに乗るか。話し合いが進むにつれて、誰が乗ってもおかしくない状況になり、そして迎えた結末は……予想外でしたねぇ。それまでの終末な世界の雰囲気が、一気にSFテイストになって驚きです。
それ自身、面白くはあったんだけど、逆にその分、好みではなくなってしまったところがあって、何とももやもやするものが残るお話でした。つまらなくないから困る。

零と羊飼い (一迅社文庫 に 1-1) - 西川 真音

零と羊飼い
西川 真音

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