「い、一年二組の日坂菜乃です……っ。わたしを文学部に入部させてください!わ、わたし、好きなんですっ!本が」
井上先輩は、目を丸くしていた。
こうしてわたしは正式な文芸部員になり、遅い初恋を自覚したのだった。
わたしがはじめて好きになった人、それは井上心葉というのだった。
文芸部部長である心葉に惹かれ、彼に近づくために文学少女になろうとがんばる文学初心者・日坂菜乃が、恋と「心中」の謎に挑むお話です。
これはよかったなあ。
遠子先輩を思う心葉は、どこか遠いところに視線をおいているんだけど、文学初心者である菜乃を導くようなやりとりは、まるで遠子先輩のようで、ああ、こうやって受け継がれていくものなのかと、序盤のシーンにはちょっとじわりときました。
心葉に好きな人がいることを感じて、それでもなお振り向いてほしいと積極的に動く菜乃の姿は、健気に思えて、でも心葉のことを思うならそっとしておいてほしいという気持ちもあり……もやもやしながら読んでたら、まさかそこまで積極的になるとは!
まあ、そうだよね。心葉みたいな人を好きになるなら、図太くなくちゃいられませんよね。
いつになく感情的になる心葉の様子が面白かった。
さて、そんな文学初心者な菜乃が、心葉オススメの本を読んで、さっぱり理解できず、ならば時代背景を調べようとしたら、そこで出会った人と親密になり……
「曽根崎心中」という物語を彷彿させる事件が発覚していく展開は、いつもながらの文学少女シリーズらしい重さがあったけど、謎解き役を受けついだ心葉の変化が一番印象的でした。決して逃げようとしない前向きさは、彼が身につけた強さですよね。むろん、後輩という守るべき存在がいたこともあったと思うけど。
なるほど、遠子先輩の強さは、心葉がいたというのも大きかったんだろうなあ、と思った次第。
すべてが明かされたときの彼の贈りものについてはグッとくるものがあったなあ。死を前にしながら、それでも贈ろうと思った、贈りたいと思った彼の思いに、じわりとくる。
いやあ、面白かった。
琴吹さんや麻貴など、文学少女シリーズで出てきた人たちも、ところどころで見かけて、嬉しくなったり切なくなったり。特に琴吹さんはなあ……。心葉のバカ。
と思ったりするけれど、コミカル担当してくれる朝倉さんのおかげで、ちょっと気分が和らいだ。
このシリーズはあとちょっとだけ続くとのことなので、続きを楽しみに待っていたいと思います。
“文学少女”見習いの、初戀。 (ファミ通文庫 の 2-8-1)
野村 美月
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