「お前が、嫉妬してくれているとは思わなかった……」
己の罪深さを恥じる気持ちと、それを上回る歓喜が声を震わせている。
「我ながら、最低だと思うが……嬉しくて、たまらない」
没落貴族にして「死神姫」と呼ばれる怪奇小説大好きなアリシアと、暴君と名高いカシュヴァーン・ライセンが結婚したら、というちょっとコミカルな夫婦生活を描いたシリーズの第五弾。今回は、豊作祈願祭の最中に、ティルナードが<翼の祈り>教団に拉致されて、というお話。
ああ、もうこのバカップルめ!お互い好きあっているのに、一方は自分の気持ちにはっきりと気づいておらず、一方は手に入れることを躊躇して。普段、何かと空気を読まなかったり、強引に突き進むのに、恋愛方面は、どちらも不器用だからじれったいったらありゃしない。特にカシュバーン。文通相手から言われるがままに、無邪気に挑発するアリシアを見て、膠着してないで動こうよ!
と思いながらニヤつく僕がいる。
これまではアリシアは、どちらかといえば受身で、それというのも買われた身だからという思いがあったからなんですが、教団の手によって、カシュバーンと引き離され、さらにはディネロと強制的に結婚させられそうになったあたりで、ようやく思いに気づき始め……たのかどうかはよくわかりませんが、少なくとも「特別」の意味はわかってきたんじゃないかなと思います。反射的に突き放してしまったあたり、ディネロは可哀想でもありますが、そこですっぱりあきらめる姿は男でした。まあ、彼に抱き上げられたところで、アリシアは「おなかが痛く」ならないですもんね。
領地のお話や、舞い戻ってきたユーランの暴走のおかげで、いつもよりもちょっとシリアスな展開でしたが、ラストにラブラブな様子を見せられたときには、通勤電車内だというのに、だーーーー!とゴロゴロしそうになりました。「おなかが痛い」の最上級にニヤニヤです。
すぐ傍に幸せが見えているというのに、手に入れることを怯えるのは、これまでの不幸があったからでしょうけれど、もっと素直になってほしいなと思いますね。
この二人だけじゃなくて、今回の一番の被害者であるティルとノーラも……ね。
死神姫の再婚 -微笑みと赦しの聖者- (B’s‐LOG文庫)
小野上 明夜
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