「殺さないよ。魔人はそんなことしないよ!」
「うん、分かってる。分かってるんだ。僕も、本当は、たぶん、シーフラウの町の人たちも、分かっているはずなのに……それでも、怖いよ」
「怖くない!怖くないよっ!いい加減にバカにするなよっ!」
INNさんの感想を読んで手に取りました。
前線で怪我を負い、療養と左遷を兼ねて、田舎に左遷された軍人のエイゴとバズは、魔法を使うための反応石を桁違いに有しているがゆえに、人々から恐れられている魔人の子供が集う学校に先生として赴くことになって……子供たちとの交流を経て、彼らを守るために立ち上がる軍人のお話です。
これは面白かった!
圧倒的魔力を持つことから、人々から阻害されてきた魔人を前にして、決して余裕ある態度は取れないエイゴとバズが、それぞれ自分なりのやり方で、子供たちとの距離を埋めていく展開が素晴らしかったです。
エイゴの突っ走りっぷりもいいけれど、ただ魔人というだけで嫌悪し、そんな自分の心を醜いと思いながら、なかなか子供たちに近づけなかったバズが、怖々ながら子供たちとの距離を詰めていくところが素敵でした。彼の心と子供たちの心をぶつからせたエイゴの隊長っぷりも良かったです。子供たちの悪戯に引っかかってばかりのときはアレでしたけど見直したよ!もちろん、これは子供たちがみな素直でいい子ってのもあるんですけどね。
迫害されながら、それでも決して心が腐ることなかったのは、仲間がいたことと、学校を作ることで、魔人の子たちを守ろうとするお婆さんのマリーベル・ムーヒンの躾の良さってのもあると思います。彼女の怒鳴り声は、叱られてる!って感じでいいですね。こういう元気ばあさん大好き。
ただ、子供たちと仲良くなればなるほど、不安な描写が見えてきて。そうだよなあ、ここは軍の施設なんだよなあ。突然現れた軍関係者の呼びかけから、子供たちの様子が一変して、彼らは何の目的で「魔人」を保護してきたのかが見えてくるあたりは、ゾクりとさせられるものがあります。まさに「魔人より恐ろしい存在」だ。
残酷なまでの現実を突きつけられながら、それでも目の前の子供を助けるために、つらい道とわかっていながら歩もうとするエイゴの姿が良かったです。贖罪の気持ちも強いと思うけれど、それは優しさがあるから、ですよね。
偏見と不安から魔人を恐怖する人の多い「世界」を前にしたら、心が折れそうになることがあるかもしれないけど、でも彼ならきっと魔人の子供たちの痛みをやわらげてくれると、癒してくれると、そう信じてます。たとえその結果「魔王」と呼ばれることになっても、後悔はしないだろうなあと思うんですが、さてさて、どうなるんでしょうね。
これからどんな優しさを伝えてくれるのか、すっごい楽しみです。
オススメ!
魔王城一限目 (ファミ通文庫)
田口 仙年堂
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