「……パルティア。しばらくの間、そなたのことは吟遊詩人殿に任せる。彼の言うことには従え」
「うん。約束するから……お願い。必ず、帰ってきて……」
王家の巫女姫の予言により、次期皇帝ハルバートの后候補に大抜擢された聖女パルティアが、不吉な宣託を回避するために、大切な人を守るために、奮闘するシリーズの第三弾。今回は、ハルバートの成人の儀を間近に控えたパルティア生誕の宴のさなかに、皇帝が倒れて……というお話です。
ああ、華やかだなあ。パルティアのために趣向を凝らすハルバートが楽しそうで楽しそうで。喜ぶ顔が見たくて、いろいろ手を尽くしたんだろうなあと思うと、ニヤリとしちゃいますね。パルティアも思いっきり喜んで、ハルバートらぶー状態になってて、まったく。ごちそうさまでした。
ともあれ、幸せな雰囲気満載だったところに、皇帝が倒れたところから、ハルバートに不穏な空気が流れ始めて、あれよあれよという間に、追い詰められていくからドキドキさせられる。言い掛かりに近い事柄が、もうひとつの事実を持ってくると、一気に真実味を帯びてしまうから、まったくもって恐ろしいものです。とはいえ、何気にハルバートが何気にたくましかったりするので、重苦しくはなかったですけど。
裏で誰が動いているかというのは、すぐ分かる……つもりだったんだけど、怪しいわりに捉えどころがなくて、何とも言えなかったかも。これじゃ僕もパルティアの事を言えないなー。
ハルバートの意外な一面が見えたり、メルキアが有能さを素敵にアピールしてくれつつも、状況が状況だけにひっくり返すのは難しい。そう思ってたときに動いてくれたのが、誰であろうラグーでした。いったいどうするのかと思ったら、こんな切り札を持っていたとは……。一度しか切れないカードを、パルティアのために切る決断をしたラグーの姿には心打たれるものがありました。
不幸ではないと言いながら「名前」に拘ったあたりに、彼の思いを感じますが、今回の決断で失ったものもあるかもしれないけど、「家族」としての思いを手に入れることができたのは、良かったとそう思いたいです。
いやあ、面白かった。
一件落着と思いきや、ラストで強烈なまでにハルバートにショックを与えることがあってどうなるかと思いましたが、パルティアという存在が、彼を支えてくれて、ほっと一息。これから先、ハルバートにはいくつもの試練が待ち構えているかもしれませんが、二人ならきっと乗り越えてくれますよね。
ラストのイラストがとても素敵でした。いつか、本当に……。
天啓のパルティア 時の女神は戴冠する (ビーズログ文庫 ま 1-3)
真朱 那奈
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