たとえ自分のこれからの行動の結果が、船底行きだとしても、絞首刑だったとしても、ひとつだけ、確信できることがある。
その瞬間、おれは後悔じゃなく、満足していることだろう。
セットはひとつ息をつき、声を張った。
「おれは、あいつの、エリーザベト=アレニウスのために、できることをするだけだ」
運命の女を探す傭兵セットと、無表情大食女の王太子エリーザベトが繰り広げるコミカル騒動成長記の第三弾。今回は、エリーザベトが王太子としてハルネスの地を視察することを聞きつけたセットが、贋金犯の調査をしにハルネスへ行ってほしいという依頼を受けるお話です。
これは面白かった!今までも普通に面白かったんだけど、今回はほんと良かった。
バラバラになってハルネスという地に足を踏み入れて、大騒動に巻き込まれていくうちに、二人の意識が表に出てくるところが、たまりません。特にあの口下手なエリザーベトが、調査のために危険を犯して牢獄入りしたセットのために、動こうとする様は、レンナルトならずとも、ニヤリとしてしまいますよ。ああ、この思いが恋だと、彼女が気づいたのはいつなんだろうと、想像して頬が緩む僕がいる。
一方のセットは、「運命の女」としてエリザーベトを意識しながらも、なかなか素直になってませんでしたが、ハルネスでお見合いするかもという町の噂を聞きつけて、ハルネス行きのために依頼を引き受けるんですから……ねぇ?ま、それでいて、依頼主相手に駆け引きを持ち込むあたりは、なかなかどうしてと思わせるものがありましたが、それすら包み込んで、さりげなく誘導する依頼主の一人ミルカの好々爺っぷりが楽しかった。裏でいろいろ画策する王族たちの様子が、たまらなく面白かった。
贋金犯の調査をするうちに、王家に対する不穏なものが見えてきて、それゆえにエリザーベトが文字通り囚われのお姫様状態になって、あろう事が精神的に弱っていくんですが、なまじそれまで感情に揺さぶられることがなかったから、ショックを受けたときの反動が普通の人以上に大きくなったんだろうなあ。
体を動かすことすら億劫になるほど弱ったエリザーベトが、まず求めたのはセットで。
そのセットが彼女を再び立ち上がらせた言葉は、とても胸に来るものがありました。そうだよなあ、彼女は決して一人だけで動いてたわけじゃないんですよね。セットだけじゃなく、これまでの冒険で、多くの人に支えられた彼女が、ここで王太子としての自覚を持ったことが、非常に印象的でした。
いやあ、面白かった!このお話がこれで終わってしまうなんて、本当に残念です。特に、ここまでがんばり始めてきたエリザーベトに対して、「玉座につかない」予言がなされたあたりは、もうちょっと見たかったなあ。もちろん、彼女がその道を選んだのは、わかりますけど、きっと一騒動あったでしょうに。
母なる陛下リリーは、きっと表立っては、大反対しただろうに、それでも、エリザーベトに向けて涙したシーンを思うと、内心では娘の応援をしたんでしょうね。その思いは娘に届いたのでしょうか。非常に気になりますが、きっと届いたに違いないと、そして、最後のアレを考えれば、きっと喜んでくれると、そう信じたいですね。
さて、次なるシリーズでは、どんな物語を見せてくれるのでしょうか。とても楽しみです。
王女修業、ごろうじろ。 (ビーズログ文庫 た 1-5)
高丘 しずる
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