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[野村美月] “文学少女”と神に臨む作家 下

もう、何日も遠子先輩に会っていない。声も聞いていない。
忘れているつもりなのに、忘れられない。心の奥にいつも存在していて、こんな風に少しのきっかけで、あざやかに再現される。
喉が熱くなって、胸も裂けそうに苦しくなった。
あんなに好きだった美羽のことも、ふっきれたんだ。
いつか平気になる。
遠子先輩のことを、忘れられるときがくる。

いやあ、良かったです。ほんと良かった。読み終わったとき、思わず目をつぶって余韻に浸ってしまうものがある。物語を書くというのは、こんなにも激しい衝動に駆られるものなのか。作家を支える人もまた、物語を届けるためなら……。
時に残酷と感じることもあるけれど、支えるとはそういうものなのかもしれないと思わされるものがあった次第。

ともあれ、上巻で暴走気味だった流人が、たったひとつの出来事から急変して、影が薄くなっていきましたが、琴吹さんを守るために奮闘する心葉は、ほんと頑張ったと思います。流人の挑発に飲まれそうになったときの琴吹さんの言葉や温もりを思うと、ああ、いい感じに思いを育んでるなあと思ってたんですが、そこは流人もわかっていて、さりげなく急所を突いてくるからイヤんなる。
思いあっているからこそ、生まれてくる不安に、胸がドキドキしっぱなしでした。

遠子先輩が生まれたときの話とか聞いてると、涙が出そうになるけれど、だからといって琴吹さんが大切じゃないわけではなく。二人の少女の間で揺れながら、心を強く持つ先輩をうらやましく思いながら、気づけば孤独に打ちひしがれていた心葉でしたが、その思いを救ってくれたのは、かつての自分の言葉で。
人は変わる。そのことを思い出させてあげた竹田さんが素敵でした。

そして、心葉によって、九年前の真実が解き明かされて。
『おばさん』に込められた思いには、涙が止まらなかったなあ。
胸を切り裂くような悲しく切ない思いを感じながらも、根底には温かく優しい思いが感じられるお話でしたね。

最後に、再びペンを手にする心葉の姿を見ると、父と同じ道を進もうとしていた遠子先輩の姿も見えてきて、きゅんとしちゃうものがあります。遠子先輩だけでなく、最後まで「バカ」と言ってくれる琴吹さんも、とっても素敵。
レモンパイの人が誰だったか。それは読んでのお楽しみってことで。

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫) - 野村 美月

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野村 美月

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Comment:2

しーぷ 2008-08-31 (日) 23:38

レモンパイの人と、文学少女が「悲しい選択」をしたきっかけにはズッコケました。こ、これだ……この感性が、作品に明るさを与えていたんだ。
事件が解決してから、卒業式までの心葉は堂々としていましたが、水妖冒頭の独白をみるに、そのあとやっぱりいつも通りになっちゃった時期もあったのかな?

deltazulu 2008-09-08 (月) 21:33

レモンパイはアレでしたよね(笑)
卒業式までの心葉は、どうでしょうねぇ。
ひとつの目標に向かってたので、周囲を見る余裕がなかったから、堂々としてたのかなとも思いますが、書かれていない部分でも、いろいろ想像して楽しめるのが、名作ってものなんでしょうね。
機会があったら読み返したいと思います。

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