「……榛名は……」
「……いない」
連れて行かれたのだ。雲を突くような大男に。そして雪風の妹は、抵抗していなかった。
「あの子が……私の手から……」
からん。日本刀が落ちた。重量があるはずだが、妙に軽い音だった。
「いなくなった……」
思春期の少女が持つアムニスという精神体を武器として、謎の生命体ラルワを倒すことを学ぶ高校に通う少女たちの物語の第五弾。前作で仕掛けてきた兄・出雲の罠にハマり、失意の底へと落ちていった雪風を、どうにかして立ち直らせようと、佑鹿が動くお話です。
いやはや、ここまでいくとは思わなかった。両方の事情を知っている佑鹿が、もう少しうまく立ち回っていれば……と思うものの、そこまで期待するのは酷だよなあ。雪風にしても、榛名がお兄ちゃん子だったことは知ってただろうに、予想できなかったのかと思わなくもないですが、仇という思いに囚われていたことが、悲劇を生んだんでしょうね。
剣を握れず、それだけならまだしも、人の視線に怯えるほどにまで傷ついた雪風を見るのは、佑鹿としても辛いと思いますが、そんな佑鹿にしても、重い現実が待ち受けてるんだから大変です。
男の戦嬢。今まで誰も触れてこなかった話題が、ようやく出てきましたけど、まだまだ謎ばかりで、かえって不安になるような情報しか出てきてないのが残念。
しかも現実は待ってくれず、ラルワの攻勢が始まってしまうんだから、ぶっちゃけ考える暇もないぐらいですが、そのあたりを五十鈴がうまくカバーしてくれてたなあ。佑鹿へ迫っているのが冗談のようで、本気度も高いのかもしれない。この様子を雪風はまだ見てないと思うけど、五十鈴だけじゃなく他の人も、佑鹿を認め始めているので、どうなっていくのかは楽しみですね。
それにしてもラストがきつい。最愛の妹から突きつけられる現実に、雪風は耐えられるのかしら。こうなってしまうと、意識してしまうがゆえに、逆に佑鹿を近づけないようにしようと思ってしまうかもしれませんね。 そもそも榛名というか、ラルワ側の思惑がわからないので、なんともいえませんが、いろいろ気になる展開です。
戦嬢の交響曲(せんじょうのシンフォニア)5 (ファミ通文庫 つ 2-2-5)
築地 俊彦
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