「あなたは私が守るよ。ハルバート」
いまはまだ正式な婚約者ですらないし、ましてや王族じゃないけど。
「儀式なんか。予言の奴を、だまくらかせばいいんでしょ」
満月の夜に聖女が受けた予言は、絶対外れないが、新月まで明かすことができない。だが、もし、その予言が不吉なものだったら……というわけで、王家の巫女姫の予言により、次期皇帝ハルバートの后候補に大抜擢された聖女パルティアが、王家に血が流れるという宣託を受けて、誰にも内緒のまま、危険を回避すべく、動き回るお話です。
いやあ、面白かった!
雨の中、屋根に上るわ、怒られても行動は改めないわで、出だしだけ読んだら、とんだじゃじゃ馬だと思ってしまうけれど、理由がわかれば、そのまっすぐさに好感が持てます。危険な予言なら、危険を最小限にとどめるなり、別の解釈ができるようにして、果たしてしまおうという機転の利かせ方が、とても素敵。
おかげで、ハルバートは心休まる暇がないように思えますが、危ないことをしたときにはパルティアを叱りながらも、そこに見えるのは包み込むような優しさで。さらには、時々愛の言葉を囁いてくれて、思わずめろめろになりそうだった。
はじめは単に予言だからという感じで、王家にやってきたパルティアだけど、惹かれていくのが見えてくるのも良かったですよねぇ。「王家に血が流れる」といった予言を受けたとき、私が守る、という決意をするところが、なんとも彼女らしいです。
そんな強気なところも見せたかと思えば、膝枕のつぶやきで乙女なところもみせてくれるし、このキャラクタは、ほんと素敵だと思いました。
で、王家に仇なすものっぽい人が現れたら、いろいろけん制したりするんですが、これがまた面白いんですよねぇ。あからさまに怪しい吟遊詩人ラグーへのけん制が、なんとも背伸びな感じがして、微笑ましく感じちゃったのは僕だけかしら。
いったい誰が、という謎については、容易に想像つくんですが、なぜその道を選んでしまったのかといったら……やっぱり人の思いってのは、時に都合よく想像しちゃうものがあるんでしょうね。最後にハルバートが見せた言葉こそが、仕掛け人が気づいてなければいけないことだっただろうに。
優しくも厳しさを感じる言葉こそが、ハルバートの芯を思わせてくれました。
いやあ、面白かった。こういうお話大好き。
ふたりとも若いどころか幼いはずなんだけど、何でこんなに大人っぽいんだろうとか、今ふと思い立ったけど、気にしないことにしましょう。おそらくは続くんじゃないかなーと思いますが、次はもっとラブラブな二人のシーンを見せてくれたらうれしいですね。
第10回えんため大賞ガールズ部門佳作受賞作。
天啓のパルティア 月の姫巫女が予言する
真朱 那奈
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