「お前が死神姫づきの死神と呼ばれ、実質ライセン強公爵の召使になっているとは驚きだ。だが……分かっているなルアーク。お前が本来誰の犬なのか」
そう言うとサイードは、二人の少女のかたわらに立つルアークを感情のない目で見つめて命じた。
「帰って来い、ルアーク。お前は俺に逆らえないはずだ」
没落貴族にして「死神姫」と呼ばれる怪奇小説大好きなアリシアと、暴君と名高いカシュヴァーン・ライセンが結婚したら、意外にもマイペースな奥様に乗せられて、というちょっとコミカルな夫婦生活を描いたシリーズの第三弾。今回は、カシュヴァーンに支援を求めてきたエリクスに差し向けられた暗殺者が、ルアークの兄で……?というお話。
ああ、楽しい。非常にニヤニヤしちゃうお話でしたね。傭兵団からやってきたバルロイに恋するレネが、カシュヴァーンとアリシアの夫婦生活を参考にしたいと言い出して、「いちゃいちゃしてください」とはやし立てるから楽しいんだ。
いちゃいちゃって何をすればいいのかしらとボケるアリシアですが、カシュバーンに見つめられたら「おなかが痛くなる」んですから、思わずニヤリ。今の感情を自覚するのがいつになるかわかりませんが、こっちはわかってるけど、本人はわかってないという状況がたまりません。
一方のカシュヴァーンも、アリシアを大事にしてる様子が伝わってきますよね。その気になれば、力づくで手に入れることができるだろうに、いまだそっち方面には疎い彼女のために、優しく包み込むように接する姿がとても良いです。
今回、アリシアに暗い衝動を覚えてしまったのは、すれ違い……というのとは違うような気もするけれど、思いが伝わってないことの苛立ちみたいなのがあったからでしょうね。もっと素直になっちゃえばいいのに。
と思ったけど、あの屋敷の中じゃ、なかなかふたりっきりで落ち着くこともできないから、難しいか。
とまあ、楽しい雰囲気の中、ルアークが、どうにも煮え切らない動きを見せてくれて、イライラするものがあったなあ。今まで、残酷なことだろうが、やさしいことだろうが、サクっと割り切ってたところがあったので、どうにももどかしいものを感じました。というか、いくら、たったひとりの兄だっていっても、そこまでいくのかなというあたりが、微妙にわかりにくかったのもあるんだろうけど。
ただ、葛藤を抱えたルアークが、アリシアの天然で、でも、純粋な思いに、自分を取り戻していくところはとてもよかったです。
いやあ、面白かった。
もともとは他人同士の集まりだったのに、いつの間にか「家族」してて、とても温かいものを感じてきました。カシュバーンがアリシアに口づけを求めるところとか、それにアリシア一生懸命応えようとするところとか、ほんと素敵。
できればアリシアがもうちょっと成長して、新たな家族ができたら、これ以上の喜びはないかも。
死神姫の再婚 -腹ぺこ道化と玩具の兵隊-
小野上 明夜
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