「……違うんです。八神さんは、そんなんじゃないんです」
「目を覚ませ!」
桜井の手が僕の頬を張り飛ばした。
「おまえ、自分がなに言ってんのか、わかってんのか?」
「……」
「この世界に鴉門と知り合いで、フェイ紅龍とも知り合いの普通の人間なんていやしねえんだよ。そんなこと、お前が一番よくわかってるはずだろが」
人でありながら人を喰らう「地蟲」に感染した少女カンナを救うために、地蟲成虫となった夏美を捜し求めたら、ついに「天使」の正体が明らかになって……というシリーズ最終巻。
天使のみならず、野槌や黒い鳥、十二の蛇などの繋がりが見えてきて、そういうことだったのかと納得してたら、さらにすごいことになってて、ゾクゾクしてました。いや、八神という存在に対して、和志がやけに絡むなとは思ってたんですが……。
信じる、信じたい。その思いが生み出す行動には、考えなしなものを感じるんだけど、でも、そのまっすぐさが彼の強さなんでしょうね。飛び出す和志を待ち続けるカンナからしたら、辛いものがあっただろうに、それでも笑顔で送り出す彼女もまた強き人だと思いました。
果南と名乗る少女との出会い、守られてる自分に気づいたときの思い、そして決意して向かえたカンナとのデート。あの雰囲気は、とても幸せそうで、いつまでも続いてほしいと思いましたよ。プリクラのメッセージにこめられたカンナの気持ちに、グッとなる。
最後の方はとてもホラーテイストで、襲い掛かってくるものの恐怖と、それ以上に心痛む出来事がありました。一区切りついたと思ったところで、さらに驚きの事実が待ち受けていて、ちょっとやるせないものを感じたり。
でも、そこで見つけたものが、決して嘘じゃないと思えるものだったなら、幸せだと思っていいよね。うん。
シリーズ開始当初のような、ザクッと切り込んでくるようなものはなかったんですが、それぞれの人の思いが感じられるお話でした。
引き金の重さが伝わってくるラストに……、思わず目をつぶる。
BLOODLINK 雪花〈下〉
山下 卓
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