「その間に、なごみ、おまえも踏ん切りつけろ。いまわら歪蟲ごときでびびんな。やるならやる、逃げるなら逃げる、だ。
お前の結論は、お前に任せる。それ次第で、次の私の出方も変わる。
けど、お前が決めるまでは、必ず私がお前を守る。」
親友の瞳を見すえて、華多那は静かに微笑を残した。
「愛してるからな」
「歪気」という、他の都市にはない力によって栄えている都市・積野辺で、潔斎なる力を得てしまった西条なごみと、その親友にしてなごみを護衛する任務を与えられた華多那の物語の完結編。
今回は、なごみの様子がおかしい。まさか、一目ぼれでは?と、華多那がなごみのあとをつけて……というところから、始まるほほえましいお話が、衝撃的展開を迎えるお話です。
男の影と見せかけて、実は捨て犬の様子を見てただけとは、お約束なオチですが、拾った子犬の可愛さに、華多那が陥落していく様子が、すっごい微笑ましい。
ふたりでわいわい騒ぎながら、犬をお風呂に入れたり、庭を駆けずり回ったりするところが、とてもいい雰囲気名だけに、時折見える微妙な気配が、不安を誘ってくれてたんですが……、まさかこういう展開を見せるとは!
予想だにしていなかった衝撃展開にやられまくる。
なごみが「力」を嫌悪するのは、わからなくもないんだけど、だからといって、子犬に執着するところは、なぜ?という疑問でいっぱいになっちゃって、そのおかげで、奇妙な方向に追い詰められていくところには、このわがまま娘を何とかしようよと、イライラ。
いや、捨て犬に、自分の境遇と重ねるものがあって、という理屈じゃないものを感じていたというところが見えるあたりは、なるほどと思ったけど、それでも頑な過ぎる。
その強情な思いが、たったひとつの迷いが、引き起こした悲劇が、つらかった……。本当に目の前でそんなことが起きたら、間違いなく、心は認めないと思います。
暗い衝動に突かれるように、力を開花させて、そして転がり落ちていく姿は、決して許されることじゃないと思うんだけど、彼女が失ったものの大きさがわかるだけに、やるせない思いで、ただ見ていることしかできませんでした。
最後になごみがつぶやいた言葉、
「あたしたちの街」
その言葉に込められた思いに、涙が浮かぶ。
いやあ、面白かった。素敵に切ない物語でしたね。できれば、もうちょっと読みたかったと思ってしまうのは、やはり二人の関係に大いなる魅力を感じていたからなんだろうなあ。
次なる物語で、どんな繊細な描写と魅力を見せてくれるのか、とても楽しみにしていたいと思います。
塔の町、あたしたちの街2
扇 智史
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