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[野村美月] “文学少女”と神に臨む作家 上

「これまでオレは、天野遠子と井上心葉の物語の、読み手でした。けど、ここから先はオレが書き手になって物語を作ります。井上ミウは書かなきゃいけないんだ。でないと、天野遠子は、消えてしまう」
気づけば、喉がからからに渇き、全身が汗でびっしょりだった。パジャマが肌に張り付いている。
天野遠子は、消えてしまう。
流人くんの声が、耳の奥で不気味に響いている。

天野遠子は、消えてしまう。

遠子先輩の卒業も間近な2月。琴吹さんと心葉が付き合い出したことを、快く思わない流人が、二人の間を揺さぶりだして……という最終章の始まりですが……

怖えー、流人、怖えー!

今までも、どこか冷たいところを見せてたけど、それでもわかりあえるものがあったような気がしてたんですが、こと遠子先輩のことになると、こうまで強引になるのか。琴吹さんと心葉の微笑ましく心温まるやり取りが、流人がくると一転して緊張感高まるから、読んでて心苦しくなります。

「心葉は、遠子姉の作家」という言葉は、ただそれだけ聞くと、甘い関係のように思えるのに、流人の口から発せられると、まるで別の響きが感じられるから恐ろしい。物語が進むにつれて、だんだんと心葉の心がやられていくのが見えてきて、やるせなくなる。
せっかくバレンタインってことで、琴吹さんが頑張ってるのに……
早いところ、芥川くんとかに相談しちゃえばいいのにと何度思ったことか。

「小説を書く」ということについては、一度恐怖を感じたところだけに、戻るのが難しいとは思うけど、でも、井上ミウとしてではなく、井上心葉として歩くことはできるんじゃないかしらと思うんだけど、さてさて。

まあ、おかげで、遠子先輩について、いろいろ見えてきましたけどね。シリーズを読んでた身としては、気になってたところだったのでありがたいものでした。なるほど、こういう現状を側で見てきたから流人は、ああいう行動に出たのかといろいろ納得したんですが……、今回、なかなか遠子先輩の心のうちが見えないこともあって、表立って見える事柄をどこまで信じられるかってのが微妙な気がする。

遠子先輩のご両親と、その親友の三角関係の真実は、どこにあるのかわかりませんが、そのことで、遠子先輩が苦しんでいると感じている流人が、最後の最後で、危険な方向に手を伸ばそうとしてて、あー、もうどうなるんだ!続きが気になって仕方ないです。

そういえば、麻貴先輩は何をしているんだろう?

“文学少女”と神に臨む作家 上 - 野村 美月

“文学少女”と神に臨む作家 上
野村 美月

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