幼いころ、セットは、紺碧の瞳を持った旅の占術師である老女予言された。笑顔の美しい女のために、剣を捧げることになるだろう、と。そして剣を手にしたセットだが、世間はすでに平和な世となって久しい。手柄を立てる道も無く、旅の護衛やら商家の用心棒やらで身を立てていたセットは、ある日、王太子を自称するエリーザベトと出会い、なんとなく放っておけなくなって、彼女を送り届けることにしたが……
「エパタイ・ユカラ」(→感想)で僕の心をかっさらった高丘しずるさんの新シリーズは、コミカルなファンタジーでした。運命の女と出会うために、傭兵家業で旅していたセットの前に現れたのは、無表情大食女の王太子エリーザベトで、というところから始まるお話です。
これは楽しいなあ。頭悪いわけじゃないんだけど、コミュニケーションが絶望的なエルサをなぜか世話してしまうセットのお父さんっぷりが楽しいです。そりゃ「ごはんを食べさせてあげよう」といわれたら、ふらふら付いて行っちゃう女の子を放っておくことはできないよなあ。まあ、彼にとって忘れられない紺碧の瞳を持っていたというのもあるんでしょうけど。
エルサが王太子を自称するならと、しかたなしに王都を目指したら、もうひとり旅連れができてしまって、この男・アルノルトが、なんとかと天才は紙一重のどっちなんだろうね状態だから、たまらないったらありゃしない。世話する苦労が二倍以上になって、それでもめげずないセットに、いっそ感動するものがありましたよ。笑いながらだけど。
まあ、アルノルトはどうでもいいんですが、肝心のヒロイン・エルサ。どこか感情を置き忘れたかのように育ってしまったおかげで、ご両親との間にも、ちょっとした溝があったりするんですが、町の人との交流や、何よりセットとの関係を持つことで、感情や人の機微などを学んでいくことになりそうですね。
今まで他人には無関心だったエルサが、お世話してくれた女性を思って落ち込んだり、話を信じてくれないセットにむくれたりと、ちょっとずつ感情を見せてくれてるようになってきたので、いつか嫉妬とかも見せてくれるんだろうなあとニヤニヤ中。
いやあ、面白かった。
つたないエルサの説明から受けた印象とは、打って変わってなご両親の様子やら、何であなたがこんな場所に?みたいな意外な展開も楽しかったです。何よりエルサのアレはすご過ぎてたまりません。
まあ、彼女の「すごさ」を確認しても、今までが今までなだけに、大きく認識を変えることのないセットでしたが、最後に「予言」を感じてしまったところに、ニヤリです。きっと、エルサも、セットの影響を受けていくんだろうなあ。
タイトルでもあるとなった「王女修業」を決意したエルサが、今後どういう道のりを歩んでいくのか、とても楽しみです。
王女修行、はじめます!
高丘 しずる
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