類稀な才女として、平民から抜擢され、エリート街道を突っ走っていた私の人生にケチがつきはじめたのは、クァークゴ帝国皇帝陛下の十三番目の息子、サーティン皇子の教育係に任命されてからだ。その日が楽しければあとはどうでもいいと考えているバカの見本のようなボンボンに付き合いすぎて、胃薬と頭痛薬が手放せない体になってしまった。しかも、二十八にもなってボンボンは言う。
「自分探しの一環で、どっか征服してみようかなと」
誰しもが凍りつき、誰しもが呆れ、それでも好きなようにさせる皇帝陛下のおかげで、私は皇子と共に、遠く離れた「地球」なる惑星を征服する旅に出ることになったが……
見た目以外ろくなものを持ってないボンボン、サーティン皇子の思いつきに振り回される羽目になった、クァークゴ帝国中央大学を史上最年少で主席卒業した才女、ワルザードのツッコミが冴えまくるお話です。
あー、これは楽しい。戦隊モノってあまり知らないんだけど、それでも「変身している間は攻撃しない」とか、お約束っていくつか知ってるじゃないですか。
皇子と、天才だけど紙一重でもある幹部たちが、そういったお約束を踏まえることに熱心なおかげで、簡単に侵略できるはずの地球を相手に二年も費やす羽目になり、皇子や幹部を相手に、ため息と罵倒と的確なツッコミを入れるワルザードの様子が、とても楽しい。
で、真面目なワルザードが、何としても戦果を上げようと、高校教師となって(ここでの名前が雅先生なのだ)地球で潜入調査を始めるんですが、受け持ちのクラスに、クァークゴ軍を蹴散らす「人類戦隊アースファイブ」の面子がいるから、また面白いんだ。
そうよだねー。あんなにあからさまに授業を抜け出したりしてるのに、クラスメイトの誰も「アースファイブ」の正体に気づかないっておかしいよねー。雅先生のツッコミに笑いが止まらん。
とまあ、基本的には、お約束とツッコミのお話なんだけど、段々と侵略すべき地球の人に対して、ワルザードが、気持ちを移してしまうところに、何ともいえない切なさを覚えましたね。
帝国軍人として戦果を上げたい。でも、子供たちや同僚との間に生まれたものを無くしたくない。
自分の思いに気づきながら、それでも気づかぬふりをして、思いつめた行動を取るあたりには、彼女の心の痛みを感じましたが、たぶん、みんなもわかってるんだろうなあ。
ラストバトルはちょっと長いかなと思いましたけど(どのあたりをパロってるのかわからなかったからかもしれない)、温かさを感じられるラストがとても素敵でした。
いやあ、面白かった。雅先生のツッコミに惚れました。これはぜひとも続きが読みたいなあ。
できれば、戦闘よりも、普段の生活を多めにしていただけると、嬉しいかも。いや、それやると雅先生の胃が大変な事になるかもしれませんが……。
ところで、皇子って、実は……と思ったりするんだけど、どうなんでしょうね?
第8回エンターブレインえんため大賞東放学園特別賞作。
雅先生の地球侵略日誌
直月 秋政
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