夏休み。麻貴先輩に「貸し」を作った遠子先輩が、姫倉の別荘へと連れて行かれ、遠子先輩を逃がさないために、また遠子先輩の「おやつ」のために、ぼくまで別荘へと連れて行かれた。そんなある日、ふたりで町の本屋さんを訪れたら、そこで、姫倉の別荘の噂話を耳にしてしまった。なんと、あの場所では、八十年前の惨劇により、幽霊がでるというのだ。
「怖いの?」という麻貴先輩の言葉に、遠子先輩は「ゆ、幽霊なんているわけがないじゃない」と、事件の謎に挑むことになったが……
姫倉家の別荘でおきた八十年前の惨劇と、今なお残る妖怪伝説の謎に、夏休みに文学少女の遠子先輩が挑むという特別編ですが、あー、もう、遠子先輩可愛いなあ!
「貸し」のせいで、麻貴先輩の絵のモデルとして、あんなことやこんなことをされて、あ~れ~となってる姿とか、別荘に幽霊が出るという話を聞いてビクビクしているのに、強がって平気なふりをしつつ、ひとりで寝れずに心葉のところにやってくるところとか、お腹が好いて物語や本をねだる姿が、すばらしい。麻貴の策略にハマって、心葉の言葉で真っ赤になった姿に、ニヤニヤにやにや。
そんな遠子先輩が、妖怪や幽霊なんていないんだから(いたら怖いから)と、当時の姫倉家の巫女たるゆりが書いていた日記を元に、事件の謎を追っていくんですが、八十年前の出来事と現在にリンクするものが見えてきたとき、それを仕掛けたであろう麻貴先輩の心情を思うと、ゾクゾクするほど怖かった。特に祟りを思わせる出来事の始まりで、血にまみれた麻貴の笑みは、鳥肌もの。
本音が見えない人って、怖いなあと思いつつ、彼女の思惑が気になって仕方なかった。
姫倉という家で、閉ざされた日常を送っていた少女の恋には切なさを感じましたが、それよりも、時折見せる遠子先輩の表情が不安でした。まるで何かを予感させるかのごとく。
ひとつの事実から、まるで別の物語を作り上げた遠子先輩の手腕は、いつもながら見事でしたし、ひねくれ者同士の恋も素敵で、ああ、よかったと思って迎えたラストでしたが、まさかまさか、これほどの驚愕が待ち受けているとは思いませんでした。たった2、3ページで、それまでの空気を一変させられるとは、予想だにしてませんでしたよ!
あのとき、遠子先輩は、何という言葉を心葉に伝えたかったんだろう。もし伝えていたら、どうなっていたんだろうと思っていただけに、歯型に込められた思いが、今後どう展開されるのか、気になります。
“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)
野村 美月
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