飛天夜叉と呼ばれた女賊は、コハクの瞳とまったく同じ瞳を持っていた。彼女の口から聞かされた言葉を胸に秘め、延々と悩んでいたコハクだが、一向にいい考えが思い浮かばなかった。
ある日、女賊たちを捕らえたという獄舎で、火の手が上がったという噂を聞きつけたリュードとツイフォンは、いまだ思い悩むコハクを置いて、現場へと向かったが、その隙に女賊ルルチェは、コハクの前に現れて……
悪戯好きな少年コハクと、才色兼備な親友でリュードが、ライセー武術院に通う友人や仲間たちを通じて、友情を深めていくお話の最終巻。前作までは、二人の周辺での騒動を描いたお話でしたが、最終巻はなんと国をも巻き込む騒動になっていました。これがまた素晴らしくて。
何がいいかっていったら、やっぱり熱い友情を感じられるところですね。突っ走るコハクとそれをフォローするリュードという今までの形も見せてくれましたけど、逆にリュードがコハクに寄りかかるところも見えて、ああ、こういう繋がりがあるからこその親友なんだなというところがとても印象的でした。
秘密を知ったリュードが頑なになったとき、心を開かせたコハクの拳が熱かった。
コハクの秘密だけでも大きかったのに、そこへリュードの秘密が関わってきたことで、一気に大事になってきましたが、さらに外から騎馬民族が攻めてきてと、どんどんと大きくなり、かつ人や物事の流れが見えてくるところが、面白いこと面白いこと。副宰相の話がちょっとあっさり気味だったのは、物足りなかったですけど、自業自得な展開はすっきり。
恋愛モノとしても素晴らしくて、コハクと彼を思うカーシャの関係は、どっちもツンツンなおかげで、進みそうで進まないのがもどかしかったですが(指摘されて照れるカーシャがかわいいことかわいいこと)、一方のリュードとツイフォン先輩が、少しずつ少しずつ距離を縮めてるのが見えて、思わずにやり。特別二人の仲がいいようには書いてないのに、言葉の端々や態度に、相手への信頼というか思いを感じるんだよなあ。こういうところが、ほんと素敵でした。
リュードの母ルージュと父の結ばれなかった恋については、切ないものがありましたけど、次の世代を担うものたちに、夢と希望を託すことができたというラストが、心の情景に浮かび上がりました。
いやあ、ほんと良かった。最後まで楽しませていただきました。このシリーズ大好き。
欲を言えば、彼らが大人になったときのエピソードとか読みたかったなあと、思ったりもしますが、それは心の中でいろいろ想像していきたいと思います。
次なるシリーズで、どんな物語を見せてくれるのかほんと楽しみだなあ。
虎は躍り、龍は微笑む落日の賦、暁星の詩 (ファミ通文庫 う 1-5-3)
嬉野 秋彦
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