「そなたはわたくしの下僕となるのだ」
恭子の言葉に、裕也の頭は真っ白になった。
文化祭で劇をやる。それはいい。恭子が主役なのも文句ない。だが、そのせいで、裕也は主人公をやることになってしまったのだ。周囲の視線の集まる中、恭子に向かって、愛ある言葉をかけることがどうしてもできずに悩む裕也だが、ある日、劇を中止しろという脅迫文が届けられて……
いやあ、笑った笑った。あるときは爆笑、あるときはニヤニヤ、うふうふ、あるときは微笑ましくと、楽しい楽しい四編の短編が収録されてました。それぞれの短編の一行目がすごい興味を引くんですよねー。抜き出してみると、
「お願い裕也、僕と付きあって」(男から)
「あ、あの、お願いします裕也さん、俺と……、付きあってください!」(ゴツイおっさんから)
「ねえ裕也くん、ちょっと生け贄になってみない?」(彼女から)
「これは命令である。そなたはわたくしの下僕となるのだ」(彼女から)
ってな事になってるんだから、裕也が不憫でなりません。
一番笑えたのは、一編目の「愛と憎しみの交差点!?」ですね。クラスメイトにして同居人にして、さらに社長の息子である自分の護衛として、最も身近にいた匠の告白から始まる物語で、実はとてもしつこい女の子に迫られたので、いっそ男好きってことにすれば諦めてくれるのでは、という匠の浅はかな思いから告白したんですが、それが一気にクラス中どころか学校中に知れわたるところに大爆笑。
いや、そりゃそうですよねー。あれだけ一緒にいたら、ちょっとは想像しますよねー。恭子とか柚里ちゃんがいたから、抑えられていたタガが崩壊して、何を言っても誰にも信じてもらえないところが楽しい限りです。思ったより早く、恭子と柚里の誤解が解けたのが残念でならないほどでした(ひどい)。
女の子を諦めさせる方法については、やりすぎだろって思わなくもなかったですが、それはおいといて、最後に恭子と裕也がみせてくれたなあ。いまだ大して進んでない二人ですが、お互いを思いあう距離感に、微笑ましくなります。
ふたりが必要以上に近づかないのは、裕也が奥手すぎるせいだからなんですが、それが浮き彫りになるのは、あらすじを書いた「眠り姫はあなたのために」ですね。
傍若無人な王女と奴隷の恋を、恭子と裕也が文化祭の劇で演じるんですが、台詞を完璧に覚えていて、匠相手ならばすらすら話せるのに、恭子を目の前にすると、演技だとわかっていても、愛の言葉ひとつ囁けないんですから、いと情けなし。まあ、裕也の台詞に、顔を赤らめた恭子を見てしまったら、意識するのもわかりますけど。
今回の短編では、恭子のツンデレっぷりがあまり感じられなかったんですが、そんな中、一番悶えたのは、キスシーンがあるからといって、本当にキスしたらぶん殴るからと、裕也に釘を刺した後の台詞です。
「別に、裕也くんと、そういうことしたくないわけじゃないから。ただ、事故とか勢いとか、そういうのでしたくないだけなんだから」
転がりまわったのは内緒。
今までは、転校することが多かっただけに、裕也がクラスメイトとの素敵な思い出を作れたのは、ほんと良かったですね。さりげなくも、裕也のために尽力した恭子の思いに、ジーンとさせられました。
いやあ、楽しかった。シリーズが終わったあとに、こんなお楽しみが待ち受けていたとは、嬉しいですね。次はどんな作品を届けてくれるのか楽しみです。
私のKnightになってよネ!ぷち
佐藤 了
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