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[野村美月] "文学少女"と慟哭の巡礼者

新しい年のはじまりの風を吸い込みながら、初詣に出かけた。琴吹さんと一緒に。なんだが気恥ずかしくて、けれど心地いい。またふたりで遊びに行こうと約束して別れてから、歯車は反転してしまった。約束を急にキャンセルされ、しかも琴吹さんは怪我で入院したという。
お見舞いはいいという琴吹さんの言葉を放っておけず、病院へと向かった心葉は、そこで片時も忘れたことの無かった少女と再会して……

美羽との再会に心を揺らす心葉を描いたお話ですが、始めの初詣での琴吹さんとのやり取りが、あまりにも微笑ましくて、心温まる感じにニヤニヤしてたんですが、それだけに美羽と出会ってからの展開はきつかったです。あれほど信頼を置いていた芥川や琴吹の言葉すら届かなくなっていくんですから。今まで美羽に対していろいろと語られていたのは、心葉からの視点だったということをまざまざと見せつけられた感じですね。
心葉としても、勘づいていただろうに、それでも手を伸ばさざるを得ない状況を作り上げるんですから、人の思いほど怖いものはないとつくづく思いました。

誤解を解く機会は幾度となくあったのに、気づこうとしなかったこと、見ようとしないところには、相変わらずの弱さでしたね。誰もが心葉を心配していて、そのことに気づいているのに、心葉自身も、他の人も傷つける行為が続くところには、ほんと辛かったです。

そんなとき、心葉の中にスッと入ってきてくれた遠子先輩が、素敵でした。宮沢賢治や谷崎潤一郎の物語を通じて、心葉の迷いを見つけていくところは、素敵にミステリーで、残酷でもありました。気づかずにいれば……と、昔の心葉なら思ったかもしれませんが、ここで自分を見つめようとしたところが、成長したところなんだろうなと思いました。むろん、美羽についての違和感もあったんでしょうけれども、それ以上に、昔と違って、自分を思ってくれる先輩がいる、友人がいる、大切なヒトがいるってことが、大きかったんじゃないかな。
心葉と遠子先輩の祈るようなイラストが、とても心に残りました。

それまでは、ただただ悪意しか感じられなかった美羽の心でしたが、実は寂しさと、大切だからこその思いが見えてくるところに、やるせない気持ちでいっぱいになりました。「B」なる人の思惑についても、許されるものではないと思いつつも、切羽詰ったものを感じるだけに、何ていうか、消化しきれないような、もやもやが残りました。

それをすっきりさせてくれたのは、文学少女たる遠子先輩の言葉でした。あの話の流れで、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を持ってきたシーンの感動といったら!込められた思いを知って読む「雨ニモマケズ」に、涙が……。

これだけでも素晴らしかったですが、「井上ミウ」の名義で心葉が書いた小説の初稿の言葉には、もはや感動という言葉だけでは物足りないぐらいのものを感じました。
「わたしは木になりたい」
ただ一人のために告げられた真摯な思いに、言葉もありません。

今までの物語があったからこそ、これだけの思いを乗せられる物語になったんだろうなあ。素晴らしい。ほんと素晴らしい。何も言わずに読めと周囲に触れ回りたくなるぐらいです。ああ、もう一度シリーズのはじめから読み返したくなってきましたよ。

いったいどうなることかと思いましたが、素敵な終わり方を迎えることができて、ホッと一息……と思いきや、ラストの呟きはなんですか!?
こうなったら、たぶん、次は遠子先輩の物語になるんだろうなあ。

時期も時期だけに、別れを意識させられますが、ビターであっても、最後はスイートになってくれることを期待したいですね。
大絶賛オススメシリーズ!!!

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫 の 2-6-5) - 野村 美月

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