「頼みがあるんだ―」
遠まわしに聞こえるけれど、黎良にとって、明の言葉は絶対の命令だった。駄目だと思ってる。嫌だと思ってる。だが、明へ罪悪感は、それを許さず、命じられるがままに、女学校の友人 ―要人の娘― と接触を図り、情報収集をする日々だった。やがて、黎良が渡した情報から起こったテロで、重傷者が出始めて……
崩壊した日本で、独立テロに巻き込まれた少女のお話ですが……、ああ、痛い。心が痛い。明への罪悪感と恋心から、テロへ協力していくところは、何度止めたくなったことか。
女学校の宿舎での恋話や、上級生を慕う下級生の視線など、心温まるものを感じるだけに、深みにはまっていく黎良を見ているのが辛かったですね。
ただ、黎良にもどこかしら想像力が足りないところがあったんだろうなと思うこともありましたね。自分の情報がもたらす結果が、友人にも降りかかるということを忘れているんですから。個人的には、友人を裏切ったことを、愚者と言いたくなりますが、それほどまでの恋というのも、ある意味羨ましくもあります。
黎良の単純さは、明自身感じていただろうに、情報収集を続けさせるのはどうかなと思ったんですが、それほどまでに追い詰められていたのかなあ。迂闊さからもたらされた結果はあまりにも残酷で……。ああ、痛い。それ以上に、怖い。今までの温かさをすべて失うシーンは、何ともいえない気持ちになりました。
これがあったから、さらなる闇に踏み込んでいくことになるんですね。それも自らの意思で。
いったいこの後、彼女はどこへ進んでいくんだろう。前作に引き続き、各章の冒頭や最後に、本編より未来からの言葉が告げられるんですが、まあ、前作のことも合わせると、別れてしまった人たちとも、再び出会うことがありそうですよね。続きが、楽しみであり、不安でもあります。
まあ、そういいつつ、全力で追いかけていきますけど。
エパタイ・ユカラ~愚者の闇
高丘 しずる
「好きか嫌いかと訊かれて、即座にどう、とは答えられません。彼女は、ともだちであり、仲間であり、姉であり、おなじく大切なひとを見殺しにした犯罪者同士でしたから。でも、これだけははっきりといえます。わたしは彼女が羨ましい。あのように苦しくて辛いことばかりの一生を、それでもいい人生だと笑っておっしゃったのだから」
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