カレンがフィルを引き取ったのは、自分と似た境遇だったからだ。船を作りたいといって少年が、いつしか大人として認められるマレバの祭りに参加する歳になった。カレンが娼婦の仕事をしていることにはいい顔をしないが、カレンが働く「レフア」の店主であるルーイとも仲良くしている。だが、ある日、鳶色の目をした男を相手にしたときから、カレンは、その男の子とが忘れられずに……
とある港町で、娼婦であるカレンと、彼女を慕うフィル、「レフア」の店主ルーイ、鳶色の目をした流れ者のキースなど、彼女に関わる男たちのお話です。恋愛ものなので「9S」よりは「ニライカナイをさがして」に近いですが、もうちょっと大人の恋物語ですね。
若く美しいのに、娼婦の道を選んだのは、幼いころの仕打ちから、奇麗事よりもお金が欲しいと願ったからなんですが、それでいて身寄りのないフィルを養うところが、彼女の気持ちの複雑さを表してますよね。明るく、客のあしらいがうまくとも、たまに見せる心の弱さが印象的。
弱さが一番見えたのは、お祭りの時かな。相手が好意を持ってくれていて、自分も好意を持っていて、楽しく過ごしておきながら、相手の心からの言葉に、自分で制限をかけてしまうところには、「今」から前に進めない臆病さが伝わってきます。
愛する人に対する男たちの姿勢は三者三様でしたが、そんな男たちとのやり取りを経たからこそ、自分の本当の気持ちに気づいていくというところが、とてもよかったです。自分の気持ちに気づいたカレンが、愛する人とキスをするシーンには、キュンとさせられました。
もうちょっと暗い方面の気持ちが書かれたら良かったんじゃないかなあと思ったりもしましたが、人を想うって素敵だなと思わされた物語でしたね。
あとがきによると、ファルティマの物語は今後も書いていきたいとのこと。この港は、雰囲気がとても素敵なので、ここを舞台した物語が読めるなら嬉しいです。新たなお話もいいけれど、今回脇役となった人たちのお話もお願いしたいなあ。
ファルティマの夜想曲恋するカレン
葉山 透
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